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初戀 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第1章 Boy meets girl
「…や、やっぱり無理…怖くて…無理だよ!」
尻込みしながら首を振る一人の少女。
舞台袖は暗がりなので顔ははっきり見えない。
だが、小声でも分かる綺麗な声だ。
「バカ!な〜にお嬢様みたいなこと抜かしてんだ!…いいか、綾香。お前は最初から銀のスプーンを咥えて生まれて来たようなオペラ歌手の奴らとは違う。…こんな小さなカフェから自分で客を唸らせてのし上がっていかなきゃなんねえんだよ!」
少女に説教をしているのは中年男だ。
…随分、乱暴な言い方だな…。
「…で、でも…」
「でもも案山子もね〜んだよ!お前の武器はその綺麗な顔と身体と天性の声!…こんだけ揃ってるんだ!ビシッと闘ってこい!」
「バンマス…!」
バンマスと呼ばれた中年男が、綾香と呼ばれた少女を突き飛ばすように舞台の中央に押しやった。
少女がまろび出るようにしながら、舞台に躍り出た。
と、同時に舞台に照明が照らされ、少女は眩しげに額に手をやる。
…当麻はその少女の顔を見た瞬間、ぎゅっと心臓を鷲掴みにされたような衝撃を受けた。
それからは瞬きするのも忘れて、少女の姿に釘付けになった。
…なんて美しい少女なんだ…。
練絹のように白く滑らかな肌…。
ライトを眩しげに見る目は大きく、瞳は黒曜石のように黒々として輝いている。
鼻はすんなりと整い、唇は今朝摘んだばかりの果実のような瑞々しさだ。
頬は薔薇色で、美しい黒髪から垣間見られる耳は桜貝のような薄桃色に染まっている。
その綺麗な耳朶には小さな真珠のピアスが優しく揺れていた。
華奢な身体を包むのはノースリーブの紅いチャイナドレス、黒い網タイツ、紅いハイヒール…
どれも安っぽい格好だ。
だが、それは少女の稀有な美しさを少しも損なうものではなかった。
むしろ、安物に包まれているからこそ、その類稀なる美貌が光り輝く…
そんな少女だった。
いきなり舞台に飛び出して来た美少女に、客席の注目は集まり、客達は歓声を上げた。
当麻の友人達も軽く口笛を鳴らす。
「…鄙には稀な…てやつだな」
「だから言っただろ?…今度デビューする歌手がとにかく凄い美人だって、オーナーから聞かされていたんだ。来た甲斐があっただろ?」
友人の得意げな言葉も、当麻の耳には入らない。
…凄く…凄く綺麗だ…。
西洋人形のように華やかで、端正で…
でもどこか寂しげだ…。
尻込みしながら首を振る一人の少女。
舞台袖は暗がりなので顔ははっきり見えない。
だが、小声でも分かる綺麗な声だ。
「バカ!な〜にお嬢様みたいなこと抜かしてんだ!…いいか、綾香。お前は最初から銀のスプーンを咥えて生まれて来たようなオペラ歌手の奴らとは違う。…こんな小さなカフェから自分で客を唸らせてのし上がっていかなきゃなんねえんだよ!」
少女に説教をしているのは中年男だ。
…随分、乱暴な言い方だな…。
「…で、でも…」
「でもも案山子もね〜んだよ!お前の武器はその綺麗な顔と身体と天性の声!…こんだけ揃ってるんだ!ビシッと闘ってこい!」
「バンマス…!」
バンマスと呼ばれた中年男が、綾香と呼ばれた少女を突き飛ばすように舞台の中央に押しやった。
少女がまろび出るようにしながら、舞台に躍り出た。
と、同時に舞台に照明が照らされ、少女は眩しげに額に手をやる。
…当麻はその少女の顔を見た瞬間、ぎゅっと心臓を鷲掴みにされたような衝撃を受けた。
それからは瞬きするのも忘れて、少女の姿に釘付けになった。
…なんて美しい少女なんだ…。
練絹のように白く滑らかな肌…。
ライトを眩しげに見る目は大きく、瞳は黒曜石のように黒々として輝いている。
鼻はすんなりと整い、唇は今朝摘んだばかりの果実のような瑞々しさだ。
頬は薔薇色で、美しい黒髪から垣間見られる耳は桜貝のような薄桃色に染まっている。
その綺麗な耳朶には小さな真珠のピアスが優しく揺れていた。
華奢な身体を包むのはノースリーブの紅いチャイナドレス、黒い網タイツ、紅いハイヒール…
どれも安っぽい格好だ。
だが、それは少女の稀有な美しさを少しも損なうものではなかった。
むしろ、安物に包まれているからこそ、その類稀なる美貌が光り輝く…
そんな少女だった。
いきなり舞台に飛び出して来た美少女に、客席の注目は集まり、客達は歓声を上げた。
当麻の友人達も軽く口笛を鳴らす。
「…鄙には稀な…てやつだな」
「だから言っただろ?…今度デビューする歌手がとにかく凄い美人だって、オーナーから聞かされていたんだ。来た甲斐があっただろ?」
友人の得意げな言葉も、当麻の耳には入らない。
…凄く…凄く綺麗だ…。
西洋人形のように華やかで、端正で…
でもどこか寂しげだ…。