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初戀 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第4章 天使のなみだ
綾香が優雅に一礼し、銀のワゴンを運んでくる。
続いて先ほどのウェイターが入って来て、シャンパンを配り始める。
何も知らない綾香は当麻と目が合うと、小さく微笑む。
当麻はなんとかこの場で綾香が傷つかないように祈るしかしなかった。
父親が配られたシャンパンのグラスを掲げながら、口を開いた。
「それでは乾杯しよう。百合子さんと望己のこれからの恋の行く末に…」
「嫌ですわ、小父さまったら…」
「恥ずかしがることはありませんよ。なかなかお似合いのカップルだと先ほどから感心していたところです。百合子さんはお目が高い」
「いやいや、当麻。うちの娘が押しかけ女房みたいで本当に申し訳ない。一人娘だからついつい甘やかしてしまってね」
ワゴンの方から銀のカトラリーを落とす音が響いた。
当麻ははっと振り返る。
綾香が真っ青な顔をして、唇を小刻みに震わせていた。
当麻は思わず立ち上がる。
綾香が小さな震える声で詫びる。
「…失礼いたしました。…新しいものとお取り換えいたします…」
そして、そのまま、逃げるように部屋を出る。
立ち上がったままの当麻に父親が声をかける。
「どうした?望己」
当麻は矢も盾もたまらず、頭を下げる。
「申し訳ありません。私はどなたともお見合いをする気はありません。最初からきちんとお断りすべきでした。…百合子さん、許してください。貴方が私を気にかけてくださったことはとても嬉しく思います。…けれど、私は貴方とお付き合いすることは出来ないのです。…どうか、私の事は忘れて、お幸せになってください。…それでは失礼いたします」
「望己!待ちなさい!」
父親の焦った声を振り切り、当麻は足早に部屋を出る。
但馬は穏やかな笑みを浮かべ、当麻の父親に声をかける。
「…当麻、望己君は誠実な良い青年だね…。百合子、お前の目は確かだった。…それでいいじゃないか…」
娘を労わるように見つめる。
百合子はしゅんと肩を落とし、寂しげに呟く。
「…ええ…。でも、あんな風に真摯に謝られたら、余計に忘れられなくなりそうですわ…」
「…百合子さん…何と申し上げたらよいのか…」
父親は、複雑な表情をしながら溜息を吐いた。
続いて先ほどのウェイターが入って来て、シャンパンを配り始める。
何も知らない綾香は当麻と目が合うと、小さく微笑む。
当麻はなんとかこの場で綾香が傷つかないように祈るしかしなかった。
父親が配られたシャンパンのグラスを掲げながら、口を開いた。
「それでは乾杯しよう。百合子さんと望己のこれからの恋の行く末に…」
「嫌ですわ、小父さまったら…」
「恥ずかしがることはありませんよ。なかなかお似合いのカップルだと先ほどから感心していたところです。百合子さんはお目が高い」
「いやいや、当麻。うちの娘が押しかけ女房みたいで本当に申し訳ない。一人娘だからついつい甘やかしてしまってね」
ワゴンの方から銀のカトラリーを落とす音が響いた。
当麻ははっと振り返る。
綾香が真っ青な顔をして、唇を小刻みに震わせていた。
当麻は思わず立ち上がる。
綾香が小さな震える声で詫びる。
「…失礼いたしました。…新しいものとお取り換えいたします…」
そして、そのまま、逃げるように部屋を出る。
立ち上がったままの当麻に父親が声をかける。
「どうした?望己」
当麻は矢も盾もたまらず、頭を下げる。
「申し訳ありません。私はどなたともお見合いをする気はありません。最初からきちんとお断りすべきでした。…百合子さん、許してください。貴方が私を気にかけてくださったことはとても嬉しく思います。…けれど、私は貴方とお付き合いすることは出来ないのです。…どうか、私の事は忘れて、お幸せになってください。…それでは失礼いたします」
「望己!待ちなさい!」
父親の焦った声を振り切り、当麻は足早に部屋を出る。
但馬は穏やかな笑みを浮かべ、当麻の父親に声をかける。
「…当麻、望己君は誠実な良い青年だね…。百合子、お前の目は確かだった。…それでいいじゃないか…」
娘を労わるように見つめる。
百合子はしゅんと肩を落とし、寂しげに呟く。
「…ええ…。でも、あんな風に真摯に謝られたら、余計に忘れられなくなりそうですわ…」
「…百合子さん…何と申し上げたらよいのか…」
父親は、複雑な表情をしながら溜息を吐いた。