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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第2章 My Fair Lady
ミルクとビスケットを銀の盆に載せ、梨央の部屋の扉をノックする。
ますみは付き添って、月城の不手際がないか見守る役だ。
既に梨央は上半身だけ起こした姿で、豪奢な寝台の中にいた。
フリルがついた真っ白なネグリジェが可愛らしい。
「お寝み前のミルクとビスケットをお持ちしました」
月城がグラスを差し出すと、梨央は小さな手で受け取り、一口だけ飲んだ。
ビスケットも手をつけないままだ。
月城はビスケットの皿を見つめる。
…妹は、こんなものを見たことも聞いたこともないだろうな…。
考えても仕方ないことなのについ考えてしまう。
「…さあ、お嬢様、もうお寝みなさいませ」
梨央の寝具を整え、ますみはランプの灯りを消そうとする。
「待って。暗くて怖いから、ランプは点けておいて」
梨央が縋るように見る。
「それはなりません。灯りは消してお寝みなさいませ。万が一のことがありましたら危険です」
ますみは譲らない。
梨央は唇をゆがめて泣きそうになる。
…かわいそうだな…。
こんな広い部屋で、暗い中で寝るのは怖いだろうな…。
「…貴族の子弟の方には小さな頃から自立心を植え付けなくてはならないのです。お小さいからといって甘やかす訳にはまいりません」
月城の心の中を読んだかのようにますみが説明する。
「…でも…今夜はお父様もいらっしゃらないし…暗いのこわい…」
梨央の美しい瞳にみるみる内に涙が盛り上がる。
思わず月城は梨央の前に跪いていた。
「…では私がお嬢様がお寝みになるまでお側におります」
「本当に?」
梨央の瞳がぱっと輝く。
「月城さん。お嬢様を甘やかすようなことを…」
咎めるますみに月城は静かに答える。
「お寝みになるまでです。お嬢様がお寝みになったら私がランプを消してまいります。…その方が危なくないでしょう?」
「それがいいわ!それなら安心して寝られる!」
「…でも…」
「もし、旦那様に叱られたら私が謝ります。ますみさんにご迷惑はおかけしません」
ますみは月城の真摯な眼差しを受け、諦めたように苦笑した。
「わかりました。では一時間ですよ。一時間でお嬢様を寝かしつけてくださいね」
梨央は寝台の上を飛び跳ね、慌てて月城に抱きとめられる。
「嬉しい!今夜は怖くないわ!月城、ありがとう!」
腕の中の白いネグリジェ姿の梨央は天使のようだ。
月城の頬は赤らんだ。
ますみは付き添って、月城の不手際がないか見守る役だ。
既に梨央は上半身だけ起こした姿で、豪奢な寝台の中にいた。
フリルがついた真っ白なネグリジェが可愛らしい。
「お寝み前のミルクとビスケットをお持ちしました」
月城がグラスを差し出すと、梨央は小さな手で受け取り、一口だけ飲んだ。
ビスケットも手をつけないままだ。
月城はビスケットの皿を見つめる。
…妹は、こんなものを見たことも聞いたこともないだろうな…。
考えても仕方ないことなのについ考えてしまう。
「…さあ、お嬢様、もうお寝みなさいませ」
梨央の寝具を整え、ますみはランプの灯りを消そうとする。
「待って。暗くて怖いから、ランプは点けておいて」
梨央が縋るように見る。
「それはなりません。灯りは消してお寝みなさいませ。万が一のことがありましたら危険です」
ますみは譲らない。
梨央は唇をゆがめて泣きそうになる。
…かわいそうだな…。
こんな広い部屋で、暗い中で寝るのは怖いだろうな…。
「…貴族の子弟の方には小さな頃から自立心を植え付けなくてはならないのです。お小さいからといって甘やかす訳にはまいりません」
月城の心の中を読んだかのようにますみが説明する。
「…でも…今夜はお父様もいらっしゃらないし…暗いのこわい…」
梨央の美しい瞳にみるみる内に涙が盛り上がる。
思わず月城は梨央の前に跪いていた。
「…では私がお嬢様がお寝みになるまでお側におります」
「本当に?」
梨央の瞳がぱっと輝く。
「月城さん。お嬢様を甘やかすようなことを…」
咎めるますみに月城は静かに答える。
「お寝みになるまでです。お嬢様がお寝みになったら私がランプを消してまいります。…その方が危なくないでしょう?」
「それがいいわ!それなら安心して寝られる!」
「…でも…」
「もし、旦那様に叱られたら私が謝ります。ますみさんにご迷惑はおかけしません」
ますみは月城の真摯な眼差しを受け、諦めたように苦笑した。
「わかりました。では一時間ですよ。一時間でお嬢様を寝かしつけてくださいね」
梨央は寝台の上を飛び跳ね、慌てて月城に抱きとめられる。
「嬉しい!今夜は怖くないわ!月城、ありがとう!」
腕の中の白いネグリジェ姿の梨央は天使のようだ。
月城の頬は赤らんだ。