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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第5章 Fly me to the Moon

「…月に恋を…?」
光はゆっくりと起き上がり、月城の頬を優しく撫でた。
「…ええ…。月は美しいけれど、決して触れることは出来ない…ただ見つめて恋い焦がれるだけ…私の手には入らない…本当は分かっていてよ、そんなこと…」
「…光様…」
光は遠くを見つめるような眼差しをした。
「…初めてお会いした頃の梨央さんは、お母様を亡くされたショックからまだ立ち直れないでいたわ。哀しげで笑顔がなくて、どこか怯えていて…子供たちの輪に入れずに乳母にしがみついていて…そんな梨央さんに私は一眼で惹かれてしまったの。この美しい従姉妹の笑顔が見たい、私が励ましてあげたい…と。
梨央さんが私に笑いかけて、差し出した手を握りしめてくれた時は嬉しかったわ。
私が梨央さんを守ると心に決めたの。
最初は…本当に可愛い妹のような存在だった。でも、美しく成長される梨央さんを見て、私はこの気持ちが恋だと悟ったの」
「光様…」
「…女性同士で従姉妹同士…報われるわけがないことも分かっていたわ。だから私はフランスに留学したの。梨央さんのお側にいて片恋のままいることが辛すぎたから…でも、パリにいても梨央さんのことばかり考えていたわ」
光はその官能的な眼差しで月城を見つめ、寂しげに笑った。
「パリではたくさんの人とつきあったわ。…男も女も…でも、誰にも恋することはできなかった…誰も梨央さんの代わりにはならなかった。私が求めているのは…愛しているのは、梨央さんお一人だと思い知らされたわ。
だから帰国したの。…数年ぶりにお会いした梨央さんは更にお美しくなられて眩しいほどだったわ。相変わらず引っ込み思案で人見知りだったけれど…」
光はくすっと笑う。
それは年相応の愛らしい笑みだった。
光は月城の髪をそっと撫でた。
…優しい慈愛に満ちた手つき…。
「…梨央様は光様を本当にお慕いしておられます。…羨ましいほどに…」
「そうね。…梨央さんは私に懐いてくれているけれどもそれは、亡くなったお母様を私に重ねているの…。母なるものを求めているだけ…決して恋ではないわ…」
「光様…」
寂しげな光の表情を見た瞬間、月城は光をそっと抱きしめていた。
光は素直に月城に身を任せる。
「…私達は同じなの。美しい月に恋い焦がれているのを知りつつも、恋することを諦めることができない…可哀想な私達…」
…可哀想な私達…。
月城は光の言葉を噛みしめる。
光はゆっくりと起き上がり、月城の頬を優しく撫でた。
「…ええ…。月は美しいけれど、決して触れることは出来ない…ただ見つめて恋い焦がれるだけ…私の手には入らない…本当は分かっていてよ、そんなこと…」
「…光様…」
光は遠くを見つめるような眼差しをした。
「…初めてお会いした頃の梨央さんは、お母様を亡くされたショックからまだ立ち直れないでいたわ。哀しげで笑顔がなくて、どこか怯えていて…子供たちの輪に入れずに乳母にしがみついていて…そんな梨央さんに私は一眼で惹かれてしまったの。この美しい従姉妹の笑顔が見たい、私が励ましてあげたい…と。
梨央さんが私に笑いかけて、差し出した手を握りしめてくれた時は嬉しかったわ。
私が梨央さんを守ると心に決めたの。
最初は…本当に可愛い妹のような存在だった。でも、美しく成長される梨央さんを見て、私はこの気持ちが恋だと悟ったの」
「光様…」
「…女性同士で従姉妹同士…報われるわけがないことも分かっていたわ。だから私はフランスに留学したの。梨央さんのお側にいて片恋のままいることが辛すぎたから…でも、パリにいても梨央さんのことばかり考えていたわ」
光はその官能的な眼差しで月城を見つめ、寂しげに笑った。
「パリではたくさんの人とつきあったわ。…男も女も…でも、誰にも恋することはできなかった…誰も梨央さんの代わりにはならなかった。私が求めているのは…愛しているのは、梨央さんお一人だと思い知らされたわ。
だから帰国したの。…数年ぶりにお会いした梨央さんは更にお美しくなられて眩しいほどだったわ。相変わらず引っ込み思案で人見知りだったけれど…」
光はくすっと笑う。
それは年相応の愛らしい笑みだった。
光は月城の髪をそっと撫でた。
…優しい慈愛に満ちた手つき…。
「…梨央様は光様を本当にお慕いしておられます。…羨ましいほどに…」
「そうね。…梨央さんは私に懐いてくれているけれどもそれは、亡くなったお母様を私に重ねているの…。母なるものを求めているだけ…決して恋ではないわ…」
「光様…」
寂しげな光の表情を見た瞬間、月城は光をそっと抱きしめていた。
光は素直に月城に身を任せる。
「…私達は同じなの。美しい月に恋い焦がれているのを知りつつも、恋することを諦めることができない…可哀想な私達…」
…可哀想な私達…。
月城は光の言葉を噛みしめる。

