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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第6章 あの月の頂で
…そうしてまた季節は巡り、二回目の春を迎え、梨央は16歳になった。
梨央の背はすらりと伸び、小さな整った顔に長い手足の西洋人のような容姿の美少女へと成長していた。
その黒い絹糸のような黒髪はさらさらと長く、肌は抜けるように白くきめ細やかで練絹のようだ。
美しい三日月のような眉、睫毛は長く濃く反り返り、切れ長な目尻、瞳はあくまで黒く、宝石のように輝いている。
すんなりと整った鼻筋、唇は桜の花のようなつややかさだ。
…梨央は類稀なる美貌を備えた、今が盛りの美しい花のような伯爵令嬢に成長していた。
相変わらず、人見知りの引っ込み思案な性格の為に、屋敷の外へ出る機会も少なかった。
しかし美貌の伯爵令嬢の噂は風の便りで伝わり、上流社会では羨望の的となり、お茶会や夜会の招待状は連日引きも切らず…な毎日であった。
もっとも梨央は知らない人々の前に出るのを何よりも苦痛としているので、出席出来るお茶会や夜会はほんのわずか…しかもそれさえ滅多に出席はしないので、北白川伯爵令嬢の花の顔を拝めた者は、まさに僥倖とも呼べるものであった。
…玄関の呼び鈴が軽やかな音を立てた。
月城が玄関に出ると、郵便配達人が恭しく郵便物を差し出す。
「ご苦労様です」
月城は静かに微笑し、労を労う。
…月城は28歳になった。
去年末、腰を痛めた為に伊豆の別荘番へと引退をした橘に代わり、今や北白川伯爵家の執事として、毎日きびきびと的確に屋敷内外の仕事を取り仕切り、使用人の切り盛りをする日々だ。
眼鏡に隠された美貌は変わらず、年と共に品位と威厳を纏い、その颯爽とした怜悧な姿は屋敷の使用人の女性や、屋敷を訪問する貴婦人達、または北白川伯爵に同行し訪れる貴族の家の令嬢達の密かな憧れの的となっていた。
月城は手際よく手紙を選り分ける。
ほとんどは梨央へのお茶会や夜会の招待状だ。
出席できそうなものだけ選り分け、梨央に出席の可否を伺う。
…一通の上質な招待状封筒に目を留める。
「…縣様からだ…」
月城はその封筒を銀の盆の一番上に大切に載せ、梨央がピアノの練習をしている音楽室へと向かった。
梨央の背はすらりと伸び、小さな整った顔に長い手足の西洋人のような容姿の美少女へと成長していた。
その黒い絹糸のような黒髪はさらさらと長く、肌は抜けるように白くきめ細やかで練絹のようだ。
美しい三日月のような眉、睫毛は長く濃く反り返り、切れ長な目尻、瞳はあくまで黒く、宝石のように輝いている。
すんなりと整った鼻筋、唇は桜の花のようなつややかさだ。
…梨央は類稀なる美貌を備えた、今が盛りの美しい花のような伯爵令嬢に成長していた。
相変わらず、人見知りの引っ込み思案な性格の為に、屋敷の外へ出る機会も少なかった。
しかし美貌の伯爵令嬢の噂は風の便りで伝わり、上流社会では羨望の的となり、お茶会や夜会の招待状は連日引きも切らず…な毎日であった。
もっとも梨央は知らない人々の前に出るのを何よりも苦痛としているので、出席出来るお茶会や夜会はほんのわずか…しかもそれさえ滅多に出席はしないので、北白川伯爵令嬢の花の顔を拝めた者は、まさに僥倖とも呼べるものであった。
…玄関の呼び鈴が軽やかな音を立てた。
月城が玄関に出ると、郵便配達人が恭しく郵便物を差し出す。
「ご苦労様です」
月城は静かに微笑し、労を労う。
…月城は28歳になった。
去年末、腰を痛めた為に伊豆の別荘番へと引退をした橘に代わり、今や北白川伯爵家の執事として、毎日きびきびと的確に屋敷内外の仕事を取り仕切り、使用人の切り盛りをする日々だ。
眼鏡に隠された美貌は変わらず、年と共に品位と威厳を纏い、その颯爽とした怜悧な姿は屋敷の使用人の女性や、屋敷を訪問する貴婦人達、または北白川伯爵に同行し訪れる貴族の家の令嬢達の密かな憧れの的となっていた。
月城は手際よく手紙を選り分ける。
ほとんどは梨央へのお茶会や夜会の招待状だ。
出席できそうなものだけ選り分け、梨央に出席の可否を伺う。
…一通の上質な招待状封筒に目を留める。
「…縣様からだ…」
月城はその封筒を銀の盆の一番上に大切に載せ、梨央がピアノの練習をしている音楽室へと向かった。