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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第4章 聖なる贈り物
休日の日曜日、月城は初めて一人で銀座に出た。
お洒落した人々で賑わう銀座の柳通り…
通り沿いの店には緑と赤で彩られたクリスマスの飾りが華やかだ。
北白川伯爵家ではクリスマス手当が出る。
そのほかにも新年に備えての新しい制服や靴なども支給される。
伯爵は使用人は美しくあるようにとのポリシーを持っているからだが、その根底には使用人に対する温かい愛情を感じ、月城はこの屋敷に勤められる幸福を噛みしめる。
今よりもっと懸命に働き、勉強し、伯爵や梨央の役に立つ人間にならなければとの決意を固める。
臨時収入をどうしようかと考えて、月城は田舎の家族にクリスマスプレゼントを買うことにした。
贈り物など貰ったことがない母や弟や妹に何かを贈ってクリスマスを祝いたかったのだ。
クリスマスなど知らない家族だが、喜んでくれるだろうな…と思いながら、月城は銀座一のデパートで母には暖かそうなカシミアのショールを、弟には雪道でも濡れない丈夫な革靴を、妹には可愛らしい赤い革靴を選んだ。
妹がそろそろ一人で歩けるようになったと先日の弟からの手紙に書いてあったからだ。
若い女店員は月城の美貌を眩しそうに見ながら
「ご家族の方はきっと喜ばれますわ。優しいお兄様ですこと」
と言いながら、それぞれの品を箱に入れ、包装紙をかけて赤いリボンで飾ってくれた。
「…ありがとうございます」
月城は微笑んだ。
女店員は恥ずかしそうに頬を赤らめた。
ふと、店内を見渡すと…洒落たアクセサリー売り場に、薄桃色の薔薇の花が象られた髪飾りが目に留まった。
ほのかな薄紅を秘めた薔薇が可憐で、それは梨央を思い起こさせた。
月城の視線を察した女店員が声をかける。
「あの珊瑚の髪飾りですか?先日イタリアから入ったばかりのお品なんですよ。お買い得ですし、お目が高いですわ」
女店員が髪飾りを持って来る。
薄い桃色が梨央の美しい黒髪と白い肌に映えそうな薔薇の髪飾りだった。
値段を見ると、月城が買えない金額ではなかった。
とっさに月城は口を開いていた。
「これも下さい。…こちらも贈り物用の包装をしていただけますか?」
…梨央様はもっと高価なものを沢山お持ちだけど…。
しかし、月城はどうしてもこの薔薇の髪飾りを梨央に贈りたかったのだ。
女店員は、髪飾りを箱に丁寧に入れながら少し残念そうな表情で尋ねた。
「…恋人の方への贈り物ですか…?」
お洒落した人々で賑わう銀座の柳通り…
通り沿いの店には緑と赤で彩られたクリスマスの飾りが華やかだ。
北白川伯爵家ではクリスマス手当が出る。
そのほかにも新年に備えての新しい制服や靴なども支給される。
伯爵は使用人は美しくあるようにとのポリシーを持っているからだが、その根底には使用人に対する温かい愛情を感じ、月城はこの屋敷に勤められる幸福を噛みしめる。
今よりもっと懸命に働き、勉強し、伯爵や梨央の役に立つ人間にならなければとの決意を固める。
臨時収入をどうしようかと考えて、月城は田舎の家族にクリスマスプレゼントを買うことにした。
贈り物など貰ったことがない母や弟や妹に何かを贈ってクリスマスを祝いたかったのだ。
クリスマスなど知らない家族だが、喜んでくれるだろうな…と思いながら、月城は銀座一のデパートで母には暖かそうなカシミアのショールを、弟には雪道でも濡れない丈夫な革靴を、妹には可愛らしい赤い革靴を選んだ。
妹がそろそろ一人で歩けるようになったと先日の弟からの手紙に書いてあったからだ。
若い女店員は月城の美貌を眩しそうに見ながら
「ご家族の方はきっと喜ばれますわ。優しいお兄様ですこと」
と言いながら、それぞれの品を箱に入れ、包装紙をかけて赤いリボンで飾ってくれた。
「…ありがとうございます」
月城は微笑んだ。
女店員は恥ずかしそうに頬を赤らめた。
ふと、店内を見渡すと…洒落たアクセサリー売り場に、薄桃色の薔薇の花が象られた髪飾りが目に留まった。
ほのかな薄紅を秘めた薔薇が可憐で、それは梨央を思い起こさせた。
月城の視線を察した女店員が声をかける。
「あの珊瑚の髪飾りですか?先日イタリアから入ったばかりのお品なんですよ。お買い得ですし、お目が高いですわ」
女店員が髪飾りを持って来る。
薄い桃色が梨央の美しい黒髪と白い肌に映えそうな薔薇の髪飾りだった。
値段を見ると、月城が買えない金額ではなかった。
とっさに月城は口を開いていた。
「これも下さい。…こちらも贈り物用の包装をしていただけますか?」
…梨央様はもっと高価なものを沢山お持ちだけど…。
しかし、月城はどうしてもこの薔薇の髪飾りを梨央に贈りたかったのだ。
女店員は、髪飾りを箱に丁寧に入れながら少し残念そうな表情で尋ねた。
「…恋人の方への贈り物ですか…?」