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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第4章 聖なる贈り物
月城が帰宅し、部屋で荷造りをしていると料理長の春がやってきた。
「田舎のご家族へ贈り物かい?」
「はい。…心ばかりのクリスマスプレゼントを…」
と、答えた月城に春はにこにこ笑いながら可愛らしい花柄の紙袋を差し出す。
「良かったらこれも入れておくれ。出来たてのクリスマスプディングと、編みたてのセーターだよ。セーターは弟さんにね。両方とも私のお節介さ」
紙袋から出てきたのは、温かそうで洒落たマロン色とクリーム色の縞のセーターと、箱に入ったドライフルーツたっぷりの香り高いクリスマスプディング…。
月城は目を見張り、慌てて首を振る。
「そんな!いただけません!春さんのクリスマスプディングなんて、どれだけ手間暇かかっているのか…セーターも…」
「安心おしよ!クリスマスプディングは毎年、試作品を作るのさ。それが大丈夫ならお屋敷用のを焼くんだよ。これはその試作品。だから気にせず食べて欲しいんだよ。でも味は確かだよ。時間がたてばたつほど美味しいからね。セーターは…私に甥っ子がいてね。年頃も同じくらいだから、多分合うと思うんだ。甥っ子にはもう何枚も編んだから、おばちゃんもうセーターはいいよ。て言われちまってね…良かったら弟さんに着てもらえたら嬉しいんだよ」
春は明るく笑い、月城の肩を叩く。
月城は目頭が熱くなるのを感じながら、唇を引き結ぶ。
「…春さん…」
「いやだねえ!こんなことくらいで泣くんじゃないよ。…あんたを見ていると、母親みたいな気持ちになっちまってね。ついつい世話を焼きたくなっちまうのさ。頑張り屋さんだからね、あんたは」
「…ありがとうございます。春さん。…こんなに素晴らしい贈り物を…母も弟も妹も喜びます…クリスマスプディングなんて…生まれて初めて食べます…しかも春さんのクリスマスプディングなんて美味しいものを…最高のクリスマスです…なんてお礼を言ったら良いのか…」
月城は頭を深々と下げる。
「大げさだねえ!…あんたにそんなに喜んで貰えたら、私の方こそ幸せさ」
春は陽気に笑い、月城の髪をわざとくしゃくしゃにする。
…と、そこにぱたぱたと軽い足音が聞こえてきたかと思うと、扉が開く音と共に息を弾ませながら梨央が飛び込んで来た。
「月城!もう帰っているの⁉︎」
月城と春は驚き、同時に振り返る。
「まあ、梨央様!」
「梨央様!どうされたのですか⁈」
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