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背徳のディスタンス
第4章 欲望の行方
ーー奈々はぼんやりと目を開けた。見慣れた天井が見える。
久しぶりに孝之(たかゆき)の夢を見た。大学時代に一人だけ付き合った恋人だ。
孝之は奈々の一つ先輩で、穏やかで優しい人だった。奈々は彼を本気で好きだったけれど、両親からの教育のせいか、性的な行為にまでなかなか踏み出せずにいた。
触られることが怖かったわけではない。性行為をしようとするたびに、両親の抑圧を思い出して躊躇してしまうのだ。それでも孝之は何も言わず、奈々の様子を見ながらゆっくりことを進めようとしてくれた。奈々も孝之も、お互い本気だったはずだ。
けれども彼との交際が両親にバレてしまい、無理やり引き剥がされてしまったのだ。
父は言った。学生のうちの恋愛は、全て遊びだと。あるいは好奇心、ただの興味だと。そんなものにうつつを抜かすことこそくだらないことなのだと。
奈々はいつも疑問だった。最初で最後、孝之に持った苦しいほどの熱情は、両親が言うところのくだらないものだったのだろうか。
違うと思ったからこそ反発し、家を出たはずなのに、いまだに自分で持った答えに奈々は自信が持てずにいた。