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背徳のディスタンス
第4章 欲望の行方
「あ……」
そんな言葉は不意打ちだった。ぽかんと口を開け、望を見つめる。
休日出勤する場合、私服でいいことになっている。さすがの奈々もほんの数時間程度のためにかっちりスーツは着ていなかった。
パステルグリーンのブラウスに、ジーンズ。ヒールのない白いパンプス。
可愛いだろうか、と思う。季節は夏の終わりだ。長袖に衣替えし、そろそろ上着が必要になってくる頃。
夏服から冬服へ。まだ衣装ケースをきちんと整理してないのもあって、服装はだいぶ適当だ。いつもは一つにまとめている髪も、だらりと下ろしたまま。なんの装飾品もつけていない。
普段と違う、緩んだ自分の姿を見られるのは恥ずかしかった。せめてブラウスは、きちんとアイロンをかけておけば良かったと思う。
そういう望も黒いパーカーにジーンズという、ラフな格好だった。普段のイメージと違う。
可愛いという言葉に照れてしまい、奈々は何も返せなかった。
そのまま望から視線を逸らし、自分のディスクに向かいパソコンを起動させる。
「シカトですか?」