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背徳のディスタンス
第4章 欲望の行方
体を折って、隣からひょこっと顔を覗かせてわずかに唇を尖らせる望。
「……変なこと言うからでしょ? 忘れ物を取りに来ただけなんでしょ? 用が済んだなら、さっさと帰りなさい。気が散るのよ」
照れてしまった自分を隠そうとすればするほど、口をついて出るのはそっけない言葉ばかりだ。
望は黙った。奈々の背後から彼の気配が消えることはなく、ずっと視線を投げかけられているのかと思うと、緊張で作業に集中できなかった。
ふいに、望が口を開いた。
「堀内先輩の仕事は、何時くらいに終わります?」
「え……?」
「今日のことです。夜まで、ですか?」
奈々は警戒する。まさか今日も、昨日みたいな社内でのプレイを要求するつもりじゃないのかと。
「悪いけど、かかって三時間くらいだから。昼過ぎには会社を出る予定。今日は残業なんてしないわよ」
「……わかってますって。何考えてたんです? また昨日みたいにここでいじめられると思いました?」
「な……お、思うわけないでしょうそんなことっ」
ついムキになって答えてしまい、奈々ははっとした。またからかわれた。