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背徳のディスタンス
第1章 プロローグ

「……ふーん。マジで変態なんですねー。先輩普段、周りの男にどう思われてるか知ってます? 『高嶺の花』だって。美人なのにノリ悪いし、下ネタ一つ話さないでしょ? 飲みの席でも。男に興味ないんじゃないかとか、男を見下してんじゃないかとか、そう思ってるやつもいっぱいいるんですよ?」
「そんなつもり……」

 確かに、飲みの席でのそういうノリは苦手だった。馴れ馴れしく下世話な話を振ってくる同期を本気で一喝したこともある。下ネタは流すか黙ってしまうし、入社して六年間、交際を申し込まれたこともあったが、全てきっぱりとお断りしていた。
 固く見られるのは仕方ないが、男を見下しているなんて、そんなつもりは欠片もなかった。お高く止まっているつもりもない。
 自分がこういう性格になってしまったのは、おそらく育った家庭環境のせいだ。

「なのに、一人でこんな大胆なことしてるなんて、先輩面白すぎですよ」

 そう言って望が笑う。いつもの無邪気な笑みとは違う、見たこともないような意地悪な顔だった。

「あ、そうだ」

 奈々の顎は押さえつけたまま、ポケットからスマホを取り出し奈々に向ける。
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