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新月の闇 満月の光
第9章 流転の兆し
「酷な事を言うかもしれないが、決して恐れるなよ。気にもかけるな。堂々としてろ。この世界に身を置く者なら、必ず通る道だ。寧ろ結芽は、運が良かった方なんだ。今まで悪意を向けられた事なんて無かったんだから」
「そうですよ。結芽さんには、沢山の理解者が居るんです! こんな手紙に負けないで下さいね」
俺の言葉に木坂が被せるように言う。
今正に言おうとしていた言葉を先に言われてしまった。
皆、思う事は同じだ。
「でも、私、何か悪い事をしたのかも知れないわ…… 。知らず知らずの内に誰かを傷つけたりしたのかも知れない…… 」
それは違う。
結芽のせいなんかじゃ無い。
あれはただの逆恨みだ …… 。
「こんなの逆恨みだよ。『mahiro』さんの言う通り。『Yume』さんは心根の美しい人なんだから。ただ、警戒だけは怠らないで下さいね」
「経験者は語る。か? 」
揶揄するように言った俺に、合坂が『えー『mahiro』さんだって多かれ少なかれ有ったでしょうが~』と、抗議の声を上げた。
まぁ、その辺はご想像にお任せする事にするがね。
「今は昔話をする時じゃ無いだろう。話を続けるからな」
あえて感情を込めずに淡々と言葉を紡ぐと、何にビビったのかガキんちょ二人が勢いよく背筋を伸ばした。
まだまだ、弄りがいのある奴らだよな。
素直にそう思えた。
ひとところに『護』にも色々ある。
ある程度はマネージャーである俺が、結芽を守る事が出来るが、俺が男である限り踏み入れられない場所がある。
その為に『ちか』を指名したんだ。
『ちなつ』では無く『ちか』を。