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新月の闇 満月の光
第9章 流転の兆し
と、思えば何とまぁ、騒いでいるのは紛う方なき弊社の社長。
千夏の両手を取り、挨拶代わりの勧誘ときている。
そんな社長を、にっこり笑ってあしらう千夏も慣れたものだ。
「社長、ふざけてないで本題に掛かるよ。結芽、千夏」
最後の言葉で二人を呼びつけて手招きをする。
社長が何か悪態を付いているが、此処は無視を決め込んで正解だった。
「今回、結芽の護衛を頼むのにはちょっとした理由があってね…… 」
そう言いながら呼びつけたのは、結芽と千夏だった筈なのだが、何故か木坂と合坂までもが加わっての話し合いとなった。
胸ポケットから取り出す折り畳んだ紙。
逸れをいち早く認めた木坂が眉根を寄せた。
「先輩、ソレ、結芽さんに見せて大丈夫なんですか? 」
「今見せないで、いつ見せんだよ。それに、」
「ねえ、一体何が有ったの? 護衛が着くって普通じゃ無いわよね」
俺と木坂の会話に割って入る結芽。
普段はこんな事をしない彼女。
そんな彼女の行動その物に滲み出ている大きな不安。
そんなの、当たり前か。
「結芽、今見せるから…… 」
俺はそう言って、あの脅迫文を机に広げて置いた。
改めて見ても強烈なインパクト。
俺でさえそう思うんだ。
結芽なら尚更。
『驚愕』
総てはその二文字で表現出来るものだった。
「な…に………これ…… 」
途切れ途切れの呟き。
愕然とした表情が、声が、結芽の心情を吐露していた。