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新月の闇 満月の光
第2章 貴方の暗闇~真紘の独白~
ほの暗い部屋。
まだ鳥のさえずりすら響かない暗闇。
決まって、何時もこの時間に目が覚める。
ふと隣を見れば、眠りに付く女。
目鼻立ちがはっきりしたショートボブの美人だ。
俺なんかと関わらなけりゃ、もっと良い男に巡り会えただろうにね。
柚芽。
昨夜も又、無理をさせた。
彼女の好意に付け込んで、俺は毎夜狂ったように彼女を抱く。
知らないんだろうね。
柚芽は。
実は、亜依とは俗に言う『仮面夫婦』って奴だと言う事を。
最初から俺達は、互いに愛し合って等いなかった。
俺にとって亜依は、憎しみの対象でしかなくて、亜依にとっての俺は、結芽を苦しめる為の手段だった。
それ程にお互い愛情なんて無かったのに別れる事はなかった。
俺には、深く思っていた女がいたから。
別れたら、彼女と生きる道が閉ざされる事だろう。
そう。
俺が心底愛して止まない女は、亜依じゃない。
彼女と育んでいた思い。
一つの思いで繋がっていた、俺達の心と身体。
逸れを、無情にも無理矢理引き裂き壊したのは、亜依。
柚芽が天使なら、亜依は悪魔。
彼女が光なら、あの女は闇。
亜依が惚れているのは……。
男の俺では無く、己と瓜二つの実妹。
亜依が愛しているのは柚芽。
憎んでいるのも柚芽。
柚芽の想いに気付いていた亜依は、当時、結芽の恋人だった俺を陥れ、彼女を苦しめた。
亜依は、自分だけしか愛せない女だったんだ。