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新月の闇 満月の光
第3章 貴方の暗闇~結芽の思い~
「本当、柚芽ってば、好きなんだねぇ。あの男に、柚芽はもったい無いと思うんだけど、あたし」
「そんな事無いよ。真紘さんは素敵な人だもの……」
「はぁ……。これぞ、あばたもえくぼだ。信じらんない。」
「紅葉ちゃん…………」
なんだか、紅葉ちゃんの口からは、真紘さんの悪口しか出て来ない気がする。
あたしは、紅葉ちゃんに気付かれないようにため息を付くと、話題を変えた。
乗ってくれると良いんだけど…………。
「そうだ! 紅葉ちゃん、小説新人賞受賞おめでとう! 次は、直木賞かな? それとも芥川賞かな?」
ウキウキと浮ついた声音でヨイショする私に、紅葉ちゃんは照れ笑いを浮かべる。
どうやら、話をそらせそう。
紅葉ちゃんの事は大好き。
幼なじみで、大の仲良し。
唯一、私だけの親友なの。
私の友達は、皆、お姉ちゃんと仲良しで、お姉ちゃんを優先した。
だけど、紅葉ちゃんだけは違って、『結芽には悪いんだけど、あたし亜依ちゃんって苦手なのよね~』って詳しい事は解らないんだけど、紅葉ちゃんだけは、お姉ちゃんじゃ無く、私を優先してくれた。
「えへへ……ありがとう。けど、直木賞や芥川賞は気が早いよ~。でもね、映画化は決まりそうなの。柚芽、女優やってみない? 主人公のモデル、実は柚芽なのよね~。あ、そうそう、事後承諾で、ごめんね~」
紅葉ちゃんの言葉に、私は目を白黒させた。
「私がモデル!? えっ、そうなの!? 」
気付かなかった。
って言うか、気づけなかったわ。
いの一番に、小説読んだけど、私は、あんなに強くて、一途で、素敵な女性じゃ無い。
真紘さんが欲しくて、我が儘で、お姉ちゃんが死んで一年しか経たないのに、真紘さんのお嫁さんになりたいと思うようになった。
ねぇ真紘さん、
思うだけなら良いでしょう?
貴方の前では、言わないから。
でも、もし、あたしに赤ちゃんが出来たら……好きって言えるかな?
言っても良いかな?