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新月の闇 満月の光
第3章 貴方の暗闇~結芽の思い~
部屋に入ってホッとするのも束の間、インターホンが鳴って、エントランス解除ボタンが点滅する。
誰かしら?
私は、通話ボタンを押した。
「はい?」
答えると、モニター画面にエントランスと、懐かしい顔が映った。
『結芽~! 陣中見舞いに来たわよ。どう? 調子は? 』
笑う顔は、かなりのベビーフェイス。
でも、あたしと同い年で、大の親友と言える存在。
「紅葉!! 今開けるわ! 待って! 」
ウキウキした浮かれた口調で私は応えると、慌ててエントランスの解除ボタンを押した。
「柚芽~。元気だった!? 」
開け放たれた玄関扉。
開口一番に、掛けられた言葉。
優しい友人の言葉と声は、自然と口元を綻ばせ、涙腺を緩める。
泣き笑いするあたしに、紅葉は驚いた顔をして見せて、ため息を付き、抱き締めてくれた。
「あんたは、何でも独りで抱えてしまう子だから、ほんと心配。ん? 何があったのかな~? もしかしなくても、義兄(おにい)さんの事、なんでしょうけどね~。結芽の悩みって」
「紅葉ちゃん……」
「まぁ、止めろと言っても止められないのが、恋。だもんねぇ、さ、この紅葉さんが話聞いたげるから、ささっ奥行こっ」
そう言った紅葉ちゃんは、あたしの身体を奥へと、押しやった。
都心に八畳のワンルームは、結構贅沢な作りに成っているのに、紅葉ちゃんは、何時も突拍子も無いような事を言う。
「芸能界1の歌姫を囲う家が、ちっちゃいワンルームなんて、馬鹿にしてる! せめて自分の家で、一緒に暮らせっての! 」
「紅葉ちゃん、隣には私の部屋、ちゃんと有るよ? 」
「え? あら、そうなの? 」
なんて、嘯く紅葉ちゃんは、はっきり物を言う人。
でも、早とちりする事もしばしば。
歯に絹を着せない人なんですよね。