この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
新月の闇 満月の光
第6章 御劔家と如月家 (みつるぎけときさらぎけ)
「真紘、取り敢えず荷物降ろしてらっしゃい。部屋はそのままにしてあるから。降ろしたらリビングにいらっしゃい。一緒にお茶しましょう」
母さんが俺の部屋の前で立ち止まるとそう言った。
俺の部屋も、長い廊下と庭に面していて、障子の引き戸だ。
けど、開けてみると、意外と中は洋間の造りに成っていて。
荷物の殆どは此処に置いて行っているから、高校生の時のまま、此処だけ時間が止まって見えた。
塵ひとつ無く、綺麗にかたずけられている部屋を見て、僅かながら罪悪感が心を過ぎる。
前回この家に立ち寄ったのは何時だったか?
随分と帰って居なかった事に、今一度思い当たって、俺は、荷物を降ろしながら溜め息を付いた。
両親共に、寂しかったに違いない。
ことり。
ダイニングテーブルの決まった場所に座ると、紅茶のカップが置かれた。
今日は、母さんの好みで紅茶らしい。
目の前に母さんが座って、一口紅茶を啜って言った。
「真紘……、また、あのバイトするんですってね。大丈夫? かあさん心配 」
「ん、大丈夫だよ……。今度は俺の意志でやる事だから 」
本当に心配そうな母さんの声音。
あの頃を思い出して心配なんだろう。
本当、『mahiro』には振り回されたから。
母さんは、逸れを間近で見て来ていたから。
とても心配してくれている。
「お前が良いと言うんだったら、かあさんもう何も言わないけど……何かあったらちゃんと話してよ。父さんもかあさんも真紘の味方なんだから……」
母さんの言葉に、俺は黙って頷いた。