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新月の闇 満月の光
第7章 ルビーとエメラルド
撮影が始まった。
現場の隅で、木坂と一緒に様子を見る。
隣から視線を感じ取って、俺は、目線だけを木坂に向けた。
目線だけを向けたのに、木坂は俺の顔を覗き込む。
「『mahiro』さんって、先輩の事だったんですねぇ……。うん、面影が残ってます。僕、当時、中坊だったから良く覚えてますよ。『mahiro』さんの活躍。今回の撮影、結芽さんの為だったんですね、」
「ん、ああ…………、俺はさ、あいつの為なら、喜んで踏み台に なってやる。ってね、そう思ってる。それくらいしか、してやれないしな……」
「先輩っ、そんな事、絶っ対、無いっす! 結芽さん、先輩が側にいるだけで良いって、」
「え……、結芽が、そう言ってたのか? 」
俺は、多分、面食らった顔をしてただろう。
木坂の言葉に、驚いたのは確かだから。
「いいえ……、すいません。けどね、そう言う表情で先輩を見てるんですよ。結芽さんってば。勿論、先輩も…………でしょ 」
ニコニコと笑う木坂は、侮れない。
こいつは、人を良く観察している男だ。
だからか、色々と良く気が付くし、優しい言葉も掛けられる。
だから、自分が担当するタレントに信頼されるんだ。
俺とはえらい違いだよ。
木坂と対話していても、ジッと撮影だけは見ていた俺は、ある事に気付いた。
まだ小さな違和感だが、コレはきっと膨らむ。
役者同士の小さなズレ。
俺は、唐突に出現したソレを見付け出していた。
「結芽の様子が変だ…………」
「えっ? 」
俺の呟きに木坂も反応して、結芽と合坂を見つめた。