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新月の闇 満月の光
第7章 ルビーとエメラルド
「俺が誰か? 逸れくらい、さっきの話の流れで気付かないのかな? 」
口元だけの笑みを続けていれば、俺が媚びを打っているとでも勘違いしたのか、合坂の表情が緩む。
言葉は辛辣で、馬鹿にした感満載なのに、視覚で取り入れた情報に惑わされて真実が見えていない。
結果は見えた。
さぁ、この落とし前、
付けさせて貰おう。
伊達に昔、『氷の皇子』とは呼ばれていた訳では無い。
今でこそ、成人して普通に社会に出て世俗で鍛えられた。
押す事も、或いは引く事も、怒りを抑えて微笑む事も覚えた。
その上で、あの呼び名は、ただ単なる、見た目だけの呼称ではないんだ。
俺の気性も含まれる。
そう、姉曰わく、牙を剥いた俺は、かなり『面倒くさい男』らしい。
「そう言えば、『mahiro』が此処に来ているって、サングリアの社長さんが言ってたよな…………。あんた、『mahiro』か………… 」
ふ~ん。
覚えていたか。
姉貴の捨て台詞を。
合坂が、怪訝そうな表情を見せた。
俺の顔に浮かぶ表情を見て。
取って付けた営業用スマイルから、本来の微笑みへ。
変わった表情に、合坂の顔色も変化していた。