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新月の闇 満月の光
第7章 ルビーとエメラルド
くんっと真紘さんの身に衝撃が起きて、彼が思わず振り返る。
私ってば、本当、唐突。
真紘さんを驚かせてしまった。
「何で柚芽が謝る? 結芽が謝る必要なんて何処にも無い」
そう言って、真紘さんは近寄って来て、私の頬を撫でた。
指先で撫でる優しい貴方の動作は、切なすぎて、私の心の中を愛しさが込み上げて来るのに十分で、思わず感極まって泣きそうになった。
「何、泣きそうな顔してんの。泣き虫結芽。それに、打ち上げなんて、絶対、行かないし、終わったんなら…………」
『ホテルに強制連行するから』
なんて事を、抱きついた私を受け止めて、真紘さんは、そう耳打ちした。
それはそれは、甘く、妖艶(つや)の有る声音で…………。
だから私は………………。
「好き。好き。愛してるの……真紘さんだから………… 」
おもわず、真紘さんに抱きついて涙をぽろりと零した。
そっと背中に手が回り、ぎゅっと抱き締められた。
そして、そっと頭を撫でられる、優しい手の感触。
いい子、いい子。
まるでそう言われているようで…………。
私は、また一つ、涙を零した。
「解ってるから…………。もう、泣くな」
優しい、今日に限ってこんなに優しいのは、彼が『mahiro』だからなのだろうか。
私は、今日に限って、優しい彼にすがりついた。
まさか、後々、この光景がCMで流れるなんて、今の私達に知る由も無かった…………。