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新月の闇 満月の光
第7章 ルビーとエメラルド
自覚しているのなら、治せよ。
そう思うのだが、如何せん自分の意志では治せない。
感情の高ぶり。
そう言った物の扱いは、一般的には難しいらしい。
特に、俺のように心を壊してしまった輩にとっては…………。
俺は、徐に席を立つと、その場を辞した。
連れ立って行く素振りは何一つ見せなかったのに、結芽までもが立ち上がり帰りますと、皆に挨拶をする。
合坂のブーイングもものともせず、帰り支度をさっさと済ませる所は結芽らしいと言えばらしい。
そして、彼女は何も言わず、黙って俺の後に付いて来たのだった。
さて、結芽と行くと言っていたホテルから、結構離れてしまっていたこの場所。
彼女持ちの男が、一喜一憂しながら選ぶ、クリスマス予約のホテル並みに悩んでしまった俺も、他の男と同じだよなと、呆れながらも、行くか行かぬか思案する。
すると結芽がまるで見透かすように俺に言った。
「ね、真紘さん。連れて行ってくれるんですよね、インペリアルホテルの最上階。楽しみにしてるんですよ」
ニコッと笑う、結芽。
解っているのだろうか? 彼女は?
着いてくれば、何が起こるのかを。
男が女をホテルに連れ込むって事は、やる事は一つだ。
「良いけど、行くからには、隣同士で枕並べて仲良く御寝んね、って訳にはいかないよ。分かってて、言ってる? 」
結芽の顔を覗き込んで、問い掛ける。
今更な事を。
普段から、問答無用で結芽をレイプ紛いのセックスに引きずり込んでいる俺が、結芽の気持ちを重んじるなんて、青天の霹靂と彼女に思われ兼ねないよな。
マジ、間抜け。