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Vesica Pisces
第9章 太陽は静寂を焦がす
『と、おるさ…あ、透は私の事好きなの?』
「は?まだそういう事いうわけ?」
鋭い視線が一層険しさを増して、直視する視線から逃れられない。
それでもふっと視線が外れると、急に透は立ち上がった。
「行くわ」
そのままさっさと歩き出し、一度も振り返る事はない。
遠くなって行く背中を必死に追いかけても、追いつかない。
搭乗口への整理フェンスもあっさり通り過ぎようとしていた。
呼び止める方法も、理由もなくただ見送るだけだった。
あと10日だ、あと10日。
10日なんてあっという間だからと自分に言い聞かせる。
「伽耶」
思い出した様に戻ってきて、フェンス越しに手招きする。
隔てるものは金属のフェンス、ぐっと後頭部を抱え込まれると待っていたのは深く長いキスだった。
「嘉登なんかに泣きつくんじゃねーよ」
ぎゅっと鼻先を摘まれると、そのまま後ろ手に振って行ってしまった。
飛び立つ飛行機を電車の窓から見送って会社に向かう。
少し早めの出社。
「おはよう、早くないか?」
『目が覚めちゃって』
「今日は雨予報じゃないけどな」
鞄に放り込んだ折りたたみ傘を指しながら圭介は笑った。
「は?まだそういう事いうわけ?」
鋭い視線が一層険しさを増して、直視する視線から逃れられない。
それでもふっと視線が外れると、急に透は立ち上がった。
「行くわ」
そのままさっさと歩き出し、一度も振り返る事はない。
遠くなって行く背中を必死に追いかけても、追いつかない。
搭乗口への整理フェンスもあっさり通り過ぎようとしていた。
呼び止める方法も、理由もなくただ見送るだけだった。
あと10日だ、あと10日。
10日なんてあっという間だからと自分に言い聞かせる。
「伽耶」
思い出した様に戻ってきて、フェンス越しに手招きする。
隔てるものは金属のフェンス、ぐっと後頭部を抱え込まれると待っていたのは深く長いキスだった。
「嘉登なんかに泣きつくんじゃねーよ」
ぎゅっと鼻先を摘まれると、そのまま後ろ手に振って行ってしまった。
飛び立つ飛行機を電車の窓から見送って会社に向かう。
少し早めの出社。
「おはよう、早くないか?」
『目が覚めちゃって』
「今日は雨予報じゃないけどな」
鞄に放り込んだ折りたたみ傘を指しながら圭介は笑った。