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Vesica Pisces
第11章 太陽は静寂に沈む
透の手が肌を撫でる。

触れられた箇所は何処も熱を帯びて、それが自分だけがおかしい気がして、きつく目を瞑った。

心臓がばくばくと暴れて今にも飛び出しそうだし、どうやって呼吸しているのかすらわからない。

お腹の奥深くにある蝋のようなものが、透にもたらされる熱でどろどろに溶け出していく。

「ひぁっ」

鋭い快感に目を見開くと、透が乳首を食んでいた。

含まれていない方は指先で捏ねられている。

どちらも違う種類の快感に身体を捩りたくとも、脇に置かれた肘に挟まれてビクともしない。

透のあつい舌は全く別の生き物の様に乳首を嬲る。

「…っふ…ゃ…ぅうっ…」

自由になる頭をせめて振って襲い来る快楽をやり過ごすけれど、初めてもたらされる愉悦の波に逆らえそうにない。

寄せる度に大きくなる波が恐くてシーツを握ると、急に全てから解放された。

荒いままの呼吸と熱を持った体だけが置いてけぼりにされる。

身体を挟み込んでいた腕ももうない。

恐る恐る目を開こうとする。

「ひあっ…ッン…」

溶け出した蜜蝋が濡らす蜜唇を透の指が撫で上げる。

ぬるりとした粘着質の感触と、節くれだった透の指先がくるりくるりとそこを這い回った。
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