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Vesica Pisces
第11章 太陽は静寂に沈む
優しくしてやりたいと思った。

処女だから何なんだって思ってたけど、伽耶は違う。

痛みに歪む顔を見ると、こっちまで身が引き裂かれそうになる。

それでも止めるなと訴える伽耶に抱いた感情。

ありきたりなそれを口にする奴をなんて陳腐だと馬鹿にしていたけれど、今なら分かる気がする。

口にせずにはいられない。

「とーう、…ぅ、き…」

用意していた台詞より、伽耶のそれの方が何倍も胸を打つ。

胸が苦しくなって、誤魔化すように造った笑顔はちゃんと笑えていただろうか。

伽耶に浮かんだ笑顔に心底ホッとして抱きしめずにいられなかった。

「愛してる」

背中に落とすその言葉が最上級なんて。

もっと他にあるんじゃないか。

それを捜すのはまた今度にして、今はこの温もりだけを感じていよう。

二人して眠りの淵に落ちて、明日の朝は伽耶を起こしてやりたい。

目覚めて一番に目を合わせておはようと言ってキスをしよう。

きっと伽耶は言葉なんかつまらないものになるくらいの笑顔を浮かべてくれるはずだから。

伽耶がいればいい。
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