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Vesica Pisces
第12章 太陽は静寂を愁う
当たり前に欲しがるもんだって

それが嫌だった

嫌だったのに

✳︎ ✳︎ ✳︎

スーツをきちっと着込んだ猛。

1番上の兄貴との距離はいつまでも縮まらない。

「何しに来たんだよ…こんな朝早く…」

「朝早く?もう11時だぞ」

カップに注ぐコーヒーの香りまで違って感じる。

「それより質問に答えろ、挨拶はしたのか?」

「…したよ」

一気に重くなったサンドイッチの入った袋をテーブルに置くと、見上げた伽耶の目が不安に揺れて居た。

「たける、俺の兄貴」

『さっき、挨拶してもらったよ』

だろうね、猛はちゃんとしてるから、抜け目ないヤツだし。

猛はコーヒーを3つ淹れて、テーブルにつく様促した。

「相変わらず鳴りっぱなしだな」

ソファーに放り投げられたスマホは、オフシーズンに入ったと言ってもずっと震えている。

「ご両親に挨拶させて欲しい」

猛ならそう言うと思った。

別に会わせたくないわけじゃない。

伽耶と別れる気なんて全くないし。

でも。

好きにすればとも言えなくて…そっぽを向いて黙り込んでしまった。

伽耶の左手がTシャツの裾を掴んで引っ張る。

『通訳して?』

伽耶は猛と真っ直ぐ向き合った。
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