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Vesica Pisces
第13章 太陽は静寂を零す
イライラする。

会社の同僚の次は、元彼かよ。

万里と嘉登がにやにやしながらこっちを見てるのもムカつく。

目を離すとすぐこれだ。

疲れてるのを気遣ってくれるのは嬉しいけど、もっと…こう…さ。

手話を封じるのは我ながら卑怯だってわかってる、解っているけど、しょうがねえじゃん。

「昔のオトコが同じ会社なんて聞いてない」

俺、怒ってんだけど、何笑ってんだよ。

はぁとため息を吐いて腕を離してベッドに転がる。

会社員だったら伽耶のそばにずっと居られんのかななんて、つまらない事を考える。

「とーる」

視線だけで伽耶を見遣ると同時に唇が頬に触れた。

『私が好きなのは透だけだから』

ぐいっと伽耶を胸に抱き寄せる。

「知ってんだよ、そんな事!!」

くだらない嫉妬は、伽耶からの初めてのキスで帳消し。

「…ッンン…」

パジャマの裾から潜り込ませた指で背中をなぞってやる。

その声を彼奴にも聞かせた?

その表情を彼奴にも見せた?

「…ッ…ぁ…」

腰骨の辺りを撫でると伽耶はたまらなく顔を上げる。

その唇を捕らえた隙にブラのホックを外すしてやった。

「と、ぅ…だめ…」

か細い声で制止する伽耶。
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