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Vesica Pisces
第15章 太陽は静寂を超える
一番若手のライダーが先頭を切ると次々に滑り始めた。

シュプールが…ガタついて見えた。

追いかける様に他のラインに乗る。

1つ目のスポットで踏み切りがズレると同時に、嫌な予感がした。

後半を棄てる為にスピードを上げて、狙いどころに入るとき、視界の端がずれていくのがわかった。

「トオル!!逃げろっ!!」

一瞬で雪崩だとわかったけれど、ブリュノの仕事を潰したくなかった。

二箇所目のスポットを指すと、ブリュノはカメラを構えて回り込んだ。

滑って行く雪を掴まえて跳ぶ。

着地はしたけれど、轟音とともに斜面が崩れていく。

人は自然を抑え込むことは出来ない。

スピードを上げても、程なく雪の波に飲み込まれた。

視界で青と白が混ざり合って、スローモーションの様に全てがゆっくりと白に侵されていった。

静寂の中で、身体は動かないのに痛みが鈍く意識を叩き起こした。

氷の結晶が目の前に見える。

明るい視界にそれ程埋まって居ないのではと嘲笑った。

ちゃんとそのままで帰ってこいって言われたのにな。

ふうっと息を吐くとズズッと体が沈んだ。

感覚が遠くなると共に意識も薄れていく。

「…か…ゃ…」

こんな事なら…。
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