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Vesica Pisces
第15章 太陽は静寂を超える
クローゼットを開けて目に着いたコートを押し込んできた。
最後にそれをドイツで着ていたとわかったのは、ポケットに入っていた袋のせい。
クリスマスマーケットで伽耶にと買ったスプーンのオーナメントとサシェは渡す機会を失ってここに眠っていたらしい。
蝋は変に溶けて、ポケットの中でばらばらになってしまっていたから、リボンのついた只のスプーンになってしまった。
「トオル!」
満面の笑顔で合流したのはベッカーとブリュノ。
あの頃よりはだいぶマシになったブリュノの感情表現。
ホテルに着くと近況を伝えながら、今回の撮影の打ち合わせに流れていく。
メインで使うはずだった写真のライダーが起こした不祥事で、一刻も早い写真が必要らしく、着いた日の午後には山へと向かっていた。
「トオル、そのジャケットで滑るの?」
「枚数持ってきてないから、とりあえずこれでいくわ」
胸ポケットから香るサシェが、なんだか伽耶がそばにいる感じがしてくすぐったい。
フォトスポットは五箇所。
狙うは中腹手前。
ラインは見えていた。
「見た目より固いな」
ベッカーの一言に他のライダーも頷いた。
最後にそれをドイツで着ていたとわかったのは、ポケットに入っていた袋のせい。
クリスマスマーケットで伽耶にと買ったスプーンのオーナメントとサシェは渡す機会を失ってここに眠っていたらしい。
蝋は変に溶けて、ポケットの中でばらばらになってしまっていたから、リボンのついた只のスプーンになってしまった。
「トオル!」
満面の笑顔で合流したのはベッカーとブリュノ。
あの頃よりはだいぶマシになったブリュノの感情表現。
ホテルに着くと近況を伝えながら、今回の撮影の打ち合わせに流れていく。
メインで使うはずだった写真のライダーが起こした不祥事で、一刻も早い写真が必要らしく、着いた日の午後には山へと向かっていた。
「トオル、そのジャケットで滑るの?」
「枚数持ってきてないから、とりあえずこれでいくわ」
胸ポケットから香るサシェが、なんだか伽耶がそばにいる感じがしてくすぐったい。
フォトスポットは五箇所。
狙うは中腹手前。
ラインは見えていた。
「見た目より固いな」
ベッカーの一言に他のライダーも頷いた。