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Vesica Pisces
第16章 太陽は静寂を憂う
アネモネでいい?

赤と白

もう、いっそ…さ。

✳︎ ✳︎ ✳︎

あーよく寝た…

「トオル!!」

覗き込んだ顔、顔、顔。

「…っんだよ…ヤローばっかじゃん…」

鼻をつく独特の匂いと、やたら白い天井や壁にここが病院だと思い知る。

「目醒ますのが遅いんだよ!!」

低体温だったのが幸いしたのか、あの規模の雪崩に巻き込まれたにしては軽い打撲で済んでいた。

「検査して異常がなければ、夜にでも一般病棟に移れますからね」

血圧を測っていた看護師のウインクにはピンクのハートマークがチラついていた。

「ブリュノ、ちゃんと撮ったんだろうな?」

部屋の隅であからさまに沈んだ表情だったブリュノを傍らに呼ぶ。

ブリュノはカメラを顔の前に出した。

巻き上げた雪と、迫り来る雪崩の境目に自分が跳んでいた。

「いーじゃん」

ブリュノはボロッと涙を零し、見せないように袖で拭った。

「他の奴らは?」

「みんな大した事ない」

一安心して息を吐いた途端、一番大事な事を思い出した。

「連絡した?」

「何人かしたけど…出なかった奴もいたよ」

当たり前だ、伽耶に電話なんて意味がない。
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