この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Vesica Pisces
第16章 太陽は静寂を憂う
アネモネでいい?
赤と白
もう、いっそ…さ。
✳︎ ✳︎ ✳︎
あーよく寝た…
「トオル!!」
覗き込んだ顔、顔、顔。
「…っんだよ…ヤローばっかじゃん…」
鼻をつく独特の匂いと、やたら白い天井や壁にここが病院だと思い知る。
「目醒ますのが遅いんだよ!!」
低体温だったのが幸いしたのか、あの規模の雪崩に巻き込まれたにしては軽い打撲で済んでいた。
「検査して異常がなければ、夜にでも一般病棟に移れますからね」
血圧を測っていた看護師のウインクにはピンクのハートマークがチラついていた。
「ブリュノ、ちゃんと撮ったんだろうな?」
部屋の隅であからさまに沈んだ表情だったブリュノを傍らに呼ぶ。
ブリュノはカメラを顔の前に出した。
巻き上げた雪と、迫り来る雪崩の境目に自分が跳んでいた。
「いーじゃん」
ブリュノはボロッと涙を零し、見せないように袖で拭った。
「他の奴らは?」
「みんな大した事ない」
一安心して息を吐いた途端、一番大事な事を思い出した。
「連絡した?」
「何人かしたけど…出なかった奴もいたよ」
当たり前だ、伽耶に電話なんて意味がない。
赤と白
もう、いっそ…さ。
✳︎ ✳︎ ✳︎
あーよく寝た…
「トオル!!」
覗き込んだ顔、顔、顔。
「…っんだよ…ヤローばっかじゃん…」
鼻をつく独特の匂いと、やたら白い天井や壁にここが病院だと思い知る。
「目醒ますのが遅いんだよ!!」
低体温だったのが幸いしたのか、あの規模の雪崩に巻き込まれたにしては軽い打撲で済んでいた。
「検査して異常がなければ、夜にでも一般病棟に移れますからね」
血圧を測っていた看護師のウインクにはピンクのハートマークがチラついていた。
「ブリュノ、ちゃんと撮ったんだろうな?」
部屋の隅であからさまに沈んだ表情だったブリュノを傍らに呼ぶ。
ブリュノはカメラを顔の前に出した。
巻き上げた雪と、迫り来る雪崩の境目に自分が跳んでいた。
「いーじゃん」
ブリュノはボロッと涙を零し、見せないように袖で拭った。
「他の奴らは?」
「みんな大した事ない」
一安心して息を吐いた途端、一番大事な事を思い出した。
「連絡した?」
「何人かしたけど…出なかった奴もいたよ」
当たり前だ、伽耶に電話なんて意味がない。