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Vesica Pisces
第16章 太陽は静寂を憂う
「トオルの彼女?」
「そーだよ、寄るな!触んな!」
未だに伽耶がここに居るのが信じられないけれど、当の本人は笑顔を振りまいている。
手に持っていたスーツケースが本当に空を超えて来たのだと証明していた。
「誰と来たの?」
クルーらを追い返して、やっと二人きりになる。
『一人で来ちゃった』
「はっ…マジで?」
こっちのホテルすらろくろく調べずとりあえずの飛行機に乗って来た伽耶の為に、個室を用意してもらって家族用のベッドも手配してもらった。
『未知たちに有給と航空券とってもらって、猛さんにこの病院だって教えてもらって…あと英さんに翻訳アプリ入れてもらったの、初めて…一人で…来れちゃった』
肩を竦めて笑ってみせるけれど、新しい所、ましてや言葉すら通じない海外に一人で出て行くなんて行為がどれだけ勇気のいる事か。
「こっち来て」
ベッドの傍をぽんぽんと示す。
歩み寄って来た伽耶の手にはスマホ。
『これ、何?説明して?』
ベッドの上でいかにもな上半身裸で寝てる俺と…オンナ。
名前も思い出せない、いつのものかもわからない一枚の画像。
「説明つっても…ヤっちゃった後じゃね?」