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Vesica Pisces
第16章 太陽は静寂を憂う
「いひゃい」

ぎゅっと頬を抓られて。

「ぃつ?」

「…多分去年のー…あ、これ買った時」

スマホと並べておいたスプーンを見せる。

『何これ?』

「クリスマスマーケットで買った、お前に」

抓っていた指が解けると、伽耶の手にやっとスプーンを手渡した。

「クリスマスプレゼント、去年のな」

『去年なんて…そんな頃から私のこと好きだったの?』

何で今日の伽耶はこんなにも真っ直ぐ見つめてくるのだろう。

「…ああ、そーだよ!俺はお前のことがずっと好きなんだよ!これからも…この先ずっと!いつまでも!!」

『それって…』

「っんだよ?文句あんのか?」

もう投げやりな気分で言い捨てたのに、伽耶はふふっと微笑んでいた。

「お前が俺とのずっと先までを考えれるようになれるまで待つからな!!」

『今だけでもこんなに好きなのに、ずっと先まで続くの?』

「当たり前だ!俺はお前のところにしか帰らねー!」

伽耶はとびきりの笑顔でベッドに手をついて、唇を重ねてきた。

『許そうかな』

「嘘でも別れるとか嫌いとか言うなよ?」

『言ってないよ』

「バーカ!この先ずっとだ」

『言ったらどうなるの?』
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