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Vesica Pisces
第16章 太陽は静寂を憂う
侑一との付き合いは全てが真新しいものだった。

ドライブや水族館、家では映画をみてまったりしたり。

普通の彼氏彼女になれて嬉しかった。

出張や残業の多い侑一を、家でご飯を作って待ったりと、段々侑一を中心にした生活になっていった。

どんなに待たされても、社内でこっそりするキス1つで帳消しにしてしまったり、どんなに会えなくても、ぎゅっと抱きしめて貰えればそれで良かった。

「伽耶、俺、海外転勤が決まったから」

『うん、未知に聞いた、おめでとう』

「お前を連れては行かないよ」

『わかってるよ、待っ「待たなくていい、別れよう」

侑一の表情は険しくもなければ、穏やかでもない。

業務連絡の様に伝えられる。

『どうして…?私…』

「お前だけのために毎日を費やせない」

『そんなの…しなくていい…』

揺るぐはずのない侑一の瞳に、どんな言葉も届かない。

「俺はお前との未来は要らない」

それからはどうやって家に帰って来たか覚えていない。

ただただ泣いて、朝も夜も無くて。

どれくらい経った後だったか、未知と和可菜が家に来て、仕事はしなさいと社会人なんだからと引っ張り出されて…

時間が止まらず動いていくことを知った。
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