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Vesica Pisces
第17章 太陽は静寂に交わる
ふふっと思わず声に出して笑ってしまい、慌てて周りを見渡すと一人の男性がこちらを見ていた。
細身のパンツにブロックチェックのシャツ、黒縁のメガネと長めの前髪、日本人らしいその人に会釈して、そそくさと退散しようとした。
が、追いかけて来たその人に腕を掴まれた。
「あ、あー…えっと、かや、さん?」
なぜ名前を知っているのか。
掴んでいた腕を外して、近くのテーブルを促すその人。
テーブルについて直ぐに彼はポケットから名刺を取り出した。
そこに記されていたのは水嶋 薫という名前。
思わず名刺と顔を見比べてしまう。
透は自由人、猛はしっかり者、薫は…ふんわりとした雰囲気を纏う物腰の柔らかい人に見えた。
「挨拶が遅くなってすみません、透の兄の薫といいます、今はアメリカに住んでるので、なかなかお会いできずに時間が経ってしまいました」
名刺にはシステムエンジニアの文字。
「雪崩に巻き込まれたなんて、さぞかし心配したでしょう?」
薫は母親のようだ、ということは猛は父親か。
「以前、猛があなたに会った時に先のことは考えてないとおっしゃったそうですけど…どうやら杞憂だったようですね」
一言も話していないのにどうしてわかるのだろう。
細身のパンツにブロックチェックのシャツ、黒縁のメガネと長めの前髪、日本人らしいその人に会釈して、そそくさと退散しようとした。
が、追いかけて来たその人に腕を掴まれた。
「あ、あー…えっと、かや、さん?」
なぜ名前を知っているのか。
掴んでいた腕を外して、近くのテーブルを促すその人。
テーブルについて直ぐに彼はポケットから名刺を取り出した。
そこに記されていたのは水嶋 薫という名前。
思わず名刺と顔を見比べてしまう。
透は自由人、猛はしっかり者、薫は…ふんわりとした雰囲気を纏う物腰の柔らかい人に見えた。
「挨拶が遅くなってすみません、透の兄の薫といいます、今はアメリカに住んでるので、なかなかお会いできずに時間が経ってしまいました」
名刺にはシステムエンジニアの文字。
「雪崩に巻き込まれたなんて、さぞかし心配したでしょう?」
薫は母親のようだ、ということは猛は父親か。
「以前、猛があなたに会った時に先のことは考えてないとおっしゃったそうですけど…どうやら杞憂だったようですね」
一言も話していないのにどうしてわかるのだろう。