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Vesica Pisces
第17章 太陽は静寂に交わる
私が眠った後、あの声を痛みで呻いていると勘違いした隣の病室の人がナースコールを押したらしく、病室を訪れた看護師は半ば呆れ顔で、細やかな小言を告げて戻って行ったらしい。
『もうナースステーションの前通れないよ』
「俺はちゃんと止めたしー」
叩きたくても相手は怪我人だ。
呑気に昼の病院食を食べる透を一暼して、向かう場所のない気恥ずかしさを抱えたまま、上階にあるカフェに向かった。
近代的な建物こそ少ないぶん、異国の街並みはそれだけで絵になる程、色とりどりでいつまでも見ていられそうだった。
初めて見る海外の風景は、ここにいる誰よりも真新しく眩しく見えているのだろう。
カフェのカウンターでサンドイッチとカフェラテを指差す。
言葉の壁も有って無いのと同じ気がした。
受け取った紙袋を持ったまま、もう少しこの街並みを見つめていたくなり、窓際に立った。
透が雪崩に巻き込まれたと知った時は心臓が止まるかと思った。
けれど、無事を確認した今となっては怪我の功名だと、こんな機会も無ければいつまでも踏み出す事は無かったのだと思える。
透はどんな手を使ってでも、私の一歩を乱暴に押し出してくれる。
『もうナースステーションの前通れないよ』
「俺はちゃんと止めたしー」
叩きたくても相手は怪我人だ。
呑気に昼の病院食を食べる透を一暼して、向かう場所のない気恥ずかしさを抱えたまま、上階にあるカフェに向かった。
近代的な建物こそ少ないぶん、異国の街並みはそれだけで絵になる程、色とりどりでいつまでも見ていられそうだった。
初めて見る海外の風景は、ここにいる誰よりも真新しく眩しく見えているのだろう。
カフェのカウンターでサンドイッチとカフェラテを指差す。
言葉の壁も有って無いのと同じ気がした。
受け取った紙袋を持ったまま、もう少しこの街並みを見つめていたくなり、窓際に立った。
透が雪崩に巻き込まれたと知った時は心臓が止まるかと思った。
けれど、無事を確認した今となっては怪我の功名だと、こんな機会も無ければいつまでも踏み出す事は無かったのだと思える。
透はどんな手を使ってでも、私の一歩を乱暴に押し出してくれる。