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Vesica Pisces
第18章 太陽は静寂を誘う
攫うのなんて簡単で、
何でしないのかって?
教えてやらねーよ
✳︎ ✳︎ ✳︎
然の怪我は選手生命に関わる程ではなく、ただ暫くは安静にとの事だった。
「見舞いなんてガラじゃないお前が、わざわざこんな所まで来た訳はなんだ?」
吉信は伽耶を見て、口元に笑みを浮かべている。
「別に、たまたまこっち来たから寄っただけじゃん」
吉信は解っていて、あえて突っ込んでこない。
伽耶も、然までもが笑いを噛み殺している。
くそっ…居心地悪ぃ。
「元気そうだし、帰るわ」
着いてものの10分。
「アイツのこと、よろしく頼むな」
吉信が伽耶にそう言ったのを背中で聞いた。
右手で伽耶のスーツケースを引き、左手は伽耶と繋いで空港へと向かう。
伽耶の表情はいつにも増して朗らかだった。
『何?』
「機嫌いいな」
「んっ!」
空港であれこれとお土産を買い込む伽耶を待つ間、溜まっていたメールを片付けていく。
その中には嘉登からのものもあり、買い物から戻りそうにない伽耶を横目に通話ボタンを押した。
〝もしもーし〟
「俺だけど」
〝オレオレ詐欺じゃねーんだから、で?大丈夫なのかよ〟
嘉登の憎まれ口は誰よりも軽い。
何でしないのかって?
教えてやらねーよ
✳︎ ✳︎ ✳︎
然の怪我は選手生命に関わる程ではなく、ただ暫くは安静にとの事だった。
「見舞いなんてガラじゃないお前が、わざわざこんな所まで来た訳はなんだ?」
吉信は伽耶を見て、口元に笑みを浮かべている。
「別に、たまたまこっち来たから寄っただけじゃん」
吉信は解っていて、あえて突っ込んでこない。
伽耶も、然までもが笑いを噛み殺している。
くそっ…居心地悪ぃ。
「元気そうだし、帰るわ」
着いてものの10分。
「アイツのこと、よろしく頼むな」
吉信が伽耶にそう言ったのを背中で聞いた。
右手で伽耶のスーツケースを引き、左手は伽耶と繋いで空港へと向かう。
伽耶の表情はいつにも増して朗らかだった。
『何?』
「機嫌いいな」
「んっ!」
空港であれこれとお土産を買い込む伽耶を待つ間、溜まっていたメールを片付けていく。
その中には嘉登からのものもあり、買い物から戻りそうにない伽耶を横目に通話ボタンを押した。
〝もしもーし〟
「俺だけど」
〝オレオレ詐欺じゃねーんだから、で?大丈夫なのかよ〟
嘉登の憎まれ口は誰よりも軽い。