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Vesica Pisces
第18章 太陽は静寂を誘う
「今朝退院」

〝伽耶ちゃんに会えた?〟

「おー、色々サンキュー」

〝そりゃ良かった、一緒に戻ってくるのか?〟

「いや、来月くらいかな」

〝忙しいヤツ〟

呆れたように笑う嘉登。

伽耶がこっちに気づいて手を振っていた。

「…嘉登、あのさ…プロポーズってやっぱした方が良い?」

〝は…え?えっ?!伽耶ちゃんに?〟

「他に誰がいるんだよ」

〝そりゃ女の子は嬉しいんじゃね?〟

「ふーん…」

〝え、何?結婚すんの?お前が?〟

「…さぁね」

俺が結婚ね…まあ、あれはそう言う意味にとれるだろう。

吉信もそう思ってあの台詞を言ったに違いない。

〝指輪とかあげろよ〟

「あー、はいはい、じゃあね」

電話の向こうでごちゃごちゃうるさい嘉登を強制オフして、ため息を吐いた。

指輪ねぇ。

『おまたせ!また仕事の電話?』

「…お前、サイズ…」

『サイズ?なんの?』

「…靴」

伽耶は首を傾げながらも笑って23センチだと言った。

搭乗のアナウンスが流れると、伽耶を搭乗口に促した。

「気をつけろよ」

『いつもと反対だね』

「チッ…うるせーよ」

伽耶はふふっと笑うと手を振って、一度も振り返ることなく帰って行った。
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