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Vesica Pisces
第19章 太陽は静寂に添う
「まあまあ!伽耶、良かったわね」

「目出度いなぁ!それで式はするのか?」

「お父さんまだ気が早いわよ」

両親は喜んでくれて、もう式はどーたら、ドレスはどーたらと話しを膨らませていた。

唯一、2人の隣に座っていた昌樹だけが、静かに伽耶を見つめていた。

『お兄ちゃん、私幸せになるよ、透とだから…幸せになる』

「…そうか、良かったな…良かったよ…」

昌樹はそれだけ絞り出すと右手で顔を覆って、肩を震わせた。

ケーキを食べて、夕食もと買い出しに出た伽耶と両親。

「やっぱ拠点は海外なのか?」

「んー、それは伽耶に任せます、仕事もあるだろうし、友達とか、言葉の壁も高いだろうし」

「…あいつが…その、子供が出来にくい事、知ってるのか?」

「らしいっすね、大した事じゃないけど」

「いいのか?お前の才能を残さなくて」

「俺以上のやつなんて、幾らでもいますよ、それに…」

昌樹と目を合わす。

「伽耶は俺の帰る場所なんで」

「かっこいい事、言ってくれるじゃねーか」

「伽耶に死ぬまで惚れててもらわねーとね」

「死ぬまでか…そうか」

昌樹はやっと顔を緩ませて、妹を頼むと一言だけ零した。

和やかな夕食を囲みながら、笑顔の両親を見てこんな風に添い遂げたいと思った。
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