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Vesica Pisces
第19章 太陽は静寂に添う
助手席の窓に手をかざして、ダイヤが煌めくのをずっと見ている伽耶。

カーテンを閉めたまま、目覚ましもかけてなくて、仕事の電話で起きた時には予定より1時間も寝坊していた。

伽耶を叩き起こして、コーヒーを流し込むと車を走らせた。

伽耶の家の近くのコインパーキングに停めると、少し皺になったジャケットを掴み、車のサイドミラーで確認しながらネクタイを締めた。

『ちょっと曲がってる』

正してくれる伽耶は気恥ずかしそうに笑っていて。

あーキスしてぇって思ったけど、昌樹の視線ビームが恐くてやめた。

伽耶は手土産のケーキとともにキッチンに消えて、俺は和室に通された。

相変わらず朗らかな雰囲気で迎えてくれるお義父さんと、今にも殺られそうな眼光鋭い昌樹が並んで座っていた。

「なんだその格好は?七五三か?」

「七五三って着物じゃなかったっけ?」

答えたあとに火に油を注いだのに気付く。

伽耶とお義母さんがケーキを運んで来るまで、昌樹に睨まれたままだった。

「あらあら、今日はまた素敵ねー透くん」

ケーキが並び、皆んな揃うと俺は昌樹を気にしつつ、両親の方は向き直った。

あー緊張する。

「伽耶を僕に下さい」
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