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Vesica Pisces
第2章 太陽は静寂を知る
やっぱりね。

別に関係ねーけど。

つーか、これって何?

✳︎ ✳︎ ✳︎

シンガポールで開催されたFMXのワールドカップのスピンオフコンテストに出場した。

久々のコンテストとエンジンの振動が心地良くて、身体中の血が沸騰して、オーディエンスの評価なんてもうどうでも良くなって思い切り跳んだ。

結果はぶっちぎりのトップだったらしいけど、正直もう一度同じトリックをしろと言われても出来ない。

打ち上げに参加して、寄って来た女とゴムの分だけセックスして、朝日が昇るよりも先にまたランプの先端に立っていた。

朧げなトリックを掴みたくて、いつの間にか顎を伝っていく汗を拭う。

スマホのアラームが制限時間を響かせて、仕方なく空港へ向かった。

空港のロビーで嘉登のメールに添付されていた写真だけを見つめる。

何枚も何枚も、馴染みの顔と、決まって週末の写真に写りこむようになったその子達。

チケットで到着時間を確かめると、午後9時となっていた。

「せっかくの金曜だってのに、ついてねーの」

独り言だったはずのそれを捕まえる人もいる。

「ツイてる金曜日に変えてやるよ」

背後から身を乗り出した男に見覚えは全くない。

なのにその男は不敵な笑みを浮かべて、航空券を摘み上げると目の前で破り捨てた。
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