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Vesica Pisces
第20章 太陽の静寂
「それ聞く?」

うんうんと期待度満点で目を輝かせる伽耶。

「言わねー」

そのままお姫様抱っこすると天蓋付きのベッドへと運んだ。

真っ新なシーツに広がった髪を一筋掬うとキスを一つ落とす。

「とーる、す、き」

「知ってる」

たった2文字のそれを伽耶が大事に音にする度、その度に胸がぎゅっとなるんだ。

頬に、首筋に、鎖骨に、胸に、ゆっくりとキスを落としていく。

脇腹と、腰骨と、太腿と、爪先にもキスを。

こんなロマンチックな夜は時間をかけて、いつもより深く深く愛を伝えたくなる。

向かい合って止めどなくキスを交わせば、それだけで満たされる。

手のひらで肌を撫でて、鼻先でくすぐって、隙間のないくらいに抱き合う。

「伽耶、すきだよ」

1番近くにいる。

言葉以上に伝わるものがある事も、伽耶が教えてくれた。

泥濘んだ伽耶のナカに呑み込まれれば、直に体温を感じて混ざり合う。

伽耶の吐息が消えていくその一瞬まで全部俺のものだと、あと何度確かめれば安心するだろう。

あの日、伽耶の肩越しにみた月の光は、確かに2人の始まりを告げていた。

もっと目が眩むような光かと思っていたけど、案外そっと灯された様な光なのかもしれない。
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