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第3章 太陽は静寂を揺する

今すぐ帰りたい。

嘉登の大事な話なんて聞かなくていい。

電話を掛けようとしてやっぱり止めた。

伽耶は自分のものじゃない。

束縛されるのも、するのも嫌いだ。

和可菜や未知となら普通に話せるのに、伽耶の前に立つとどうしても上手く言葉にならない。

あの言葉が魔法の言葉になるだろうか。

『トール、帰るの？』

『用事思い出した、またな』

『私も帰るぅ〜』

彼女を狙っているライダーが凄い剣幕でこっちを睨んでいるのがわかった。

『いいって、もうちょい呑んでけよ』

絡まった腕を外して輪に戻すと、途端にそいつは上機嫌で堕としにきていた。

真っ白な息が空に広がる。

チラチラと輝く星空を見上げてしまうくらいセンチメンタルになっている自分を嘲笑ってしまう。

首元をキュッと締めてザクザクと足元を踏みしめる。

「だっせ…」

言いたいことも言えない。

伽耶が笑ってくれない理由はなんとなくわかっている。

今頃、嘉登に告白されて受け入れているだろうか。

せっかくの優勝祝いも遠い事のようで、ぎゅっと目を閉じた。

「静かだなぁ…」

しんと静まり返った空間にたった一人取り残された気がして、孤独に震える自分が確かに存在していた。