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Vesica Pisces
第3章 太陽は静寂を揺する
エントリーしたFMXを見るために場所を提供しろと言ってきたのは万里だった。

時差の都合で優勝したのは前日で、録画してくれていたらしい。

留守にする事が多いあの家は、イベントごとに誰かが連絡してきて使ってくれて、あとは体のいい宿泊施設と化している。

こっちはこっちで朝っぱらからずっと呑んだくれていた。

パソコンで継なげていつものメンバーが映るとやっぱり嬉しくて、楽しくて。

ビールを取りに席を立ち、戻ると画面の端にコートを脱ぐ伽耶が見えた。

暫くして和可菜と共にお祝いをしてくれたけれど、やっぱりその手が語ることはなかった。

何なんだ、何で話さないんだよ。

強張った笑顔に苛立つ。

他の男にはあんな笑顔で話せるのに。

そしてその苛立ちに油を注ぐ嘉登からのメール。

嘉登に寄り添う伽耶。

ほんのり紅くなった頬と、自然な笑顔。

止めどなく送られてくる写真はどれも恥ずかしそうにはにかむ伽耶と野郎どもが密着した写真ばかりで、嘉登のそれに悪意を感じずにはいられなかった。

そして、決定打。

「あと、大事な話もあるし」

大事な話って、何だよ。

何で伽耶じゃなくてこっちを見て言うんだよ。

伽耶は笑顔で皆んなに手を振って帰っていった。
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