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Vesica Pisces
第4章 太陽は静寂を開く
やっと腕を掴まえる。

「何で逃げるんだよ」

大きく見開いた瞳はすぐに逸らされ、頭を下げる。

「だからっ…!」

視線を逸らされれば、言葉には何の力もない。

「ここで、待ってて」

伽耶の視線の先に持っていった手先でそうやって話す。

身を翻そうとした腕を今度は伽耶が引き止める。

『怪我してる』

左肘についた擦り傷には血が滲んでいたけれど、もうとっくに乾いていた。

伽耶はポーチから絆創膏を取り出し、そこに貼り付けた。

「こっから動くなよ」

念押しして戻るとパーカーを羽織り、BMXに乗って伽耶の元へ急いだ。

「何慌ててんだ、だっせ…」

伽耶はその場でスマホを見つめている。

「先約?」

『嘉登さんからです』

皆んなで写っている画像を送ってくるくらいだから、メールなんて今更だけど目の当たりにすると面白くない。

『手話…出来るんですか?』

伽耶の瞳は警戒心なのかなんなのか怯えた様にチラチラと逸らされる。

「飯、食った?」

『まだ、ですけど』

「行こ」

付いてきてくれる確信なんかなかったけれど、先立って歩くと伽耶はBMXを挟んで少し遅れて歩いてきてくれた。

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