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Vesica Pisces
第5章 太陽は静寂を焼く
重くはないけれど、背中に程よく掛けられた体重により密着度が増している感じがする。

首筋に顔を埋められて、伸ばした手の上からお腹に腕を回される。

コップにはもう水が溢れそうな程溜まっていた。

震える指先で何とか蛇口を閉める。

コップをシンクに置くと、回されていた腕に更にきゅっと力が篭る。

吐息が首筋に掛かると、その不規則な呼吸に何か言葉を発しているのは判るのに、唇を読むどころか見ることも出来ないこの状況では判るはずもない。

唇が微かに動くたび掠めた箇所が熱を孕む。

身をよじって振り向こうとすると、腕が緩むと代わりに底なしの淋しさが襲う。

顔だけ僅かに振り向くと至近距離に透が真っ直ぐに伽耶を見つめていた。

鼻先がくっつきそうな程なのにその視線を外すことが出来ない。

透の右手はひんやりとしているのに、なぞられた頬はちりちりと熱を持つ。

もうだめだと視線を下に落とすと、すぐ様透の指先がすくい上げた。

一ミリずつ近く唇と、部屋中に響いているのではないかと思うほどバクバクと脈打つ心臓。

一瞬触れて。

僅かに離れて。

視線が交わると、静かに、確かに




–––– 唇は重なった。

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