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Vesica Pisces
第5章 太陽は静寂を焼く
みんなと居た方がマシだと、結局下に下りて空いてる場所をさがすと、伽耶が。

伽耶が窓から夜空を見上げていた。

そっと死角から近づいた。

か細く注がれる水、コップをしっかりと掴む細い手首。

ソファーに凭れて眠る嘉登の姿がここから見えた。

「なんなんだよ…っ…!」

ふわふわのルームウェアの上、背後からぎゅっと抱きしめると伽耶の身体は瞬時に強張った。

自分と同じシャワージェルの匂いが伽耶の首筋から芳る不思議に頬が緩む。

「嘉登のもんでいい」

いつも誰かに求められて。

「喋らなくてもいい」

無いものなんて考えた事もない。

「お前…いつからそこにいるんだよ…勝手に入ってくんじゃねぇよ…」

蛇口を閉めてコップが手から離れると、抱きしめると手に力が篭った。

身をよじる伽耶がなぜか恨めしい。

だけど、そっと肩越しに振り向いてくれた伽耶は恨み辛みも何処かへ消しとばす表情だった。

あぁ、もうだめだ。

触れたい。

その奥底まで。

そのひとひらでもいいから。

頬を包んで、その柔さに心臓が五月蝿い。

キスってどうやるんだっけ?

引き合うように唇が触れる。

一瞬離れて、視線が交わると僅かばかりの理性の糸が焼き切れた。

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