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Vesica Pisces
第7章 太陽は静寂を掴む
「どういう意味?」

『誰か他の人じゃなくて…私で良かったのかなって』

「俺と二人じゃイヤだった?」

頬杖をついて空に向かって呟く透の横顔には、明らかな不快感。

「ああ、嘉登がいた方が良かったとか?」

『二人だけでいいです!!』

思わず力が入って立ち上がってしまったけれど、どう収めていいかわからなくなる。

『トイレ、トイレ行って来ます!!』

逃げるようにその場を後にして。

勢いで言った言葉に、今更恥ずかしくなる。

どんな顔をして戻ればいいのか分からなくても、いつまでもここにいるわけにいかず、寄り道をしながら透の元に戻る。

そっと隣に立つと、透は伽耶を頬杖をついたまま見上げた。

「俺も二人で、二人きりで来たかった、だから誘った」

それだけで胸がいっぱいになる。

「帰るか」

立ち上がった透の後をついていく。

緩みっぱなしの頬を抑えて、駐車場までの道のりがもっとあればと思いながらゆっくり歩いた。

人が少なくなると真冬の深夜の空気は冷たすぎて、一気に冷え込んだ。

車に乗りこみ、エンジンが温まるまで暫くその場に留まっていた。

「…もう帰る?」

帰ると言ったのは透の方なのに。


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