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Vesica Pisces
第7章 太陽は静寂を掴む
「時間、いいなら…初日の出でも見に行く?」

思い掛けない誘い。

「どーせ初めてだろ?無理にとは言わねーけど」

『行きたいです!いいんですか?』

「じゃー行きますか」

程なくして着いたのは透の家だった。

「ここで待ってて」

透がいない間に母に初日の出を見に行ってから帰るとメールしたけれど、時間が時間だけに返事が返って来ることは無かった。

トランクが閉まる振動の後、透が運転席に乗りこみハンドルを握った。

『何か…ありました?』

「…別に」

透は前だけを見てひたすら走ること二時間。

目的地にほど近いコンビニに立ち寄った。

『何か飲みますか?』

「嘉登にも敬語?」

『もちろんです』

ホットの缶コーヒーとカフェオレを二本カゴに入れて、レジで透は唐揚げを、伽耶はレジ脇のお菓子といちご大福を会計した。

「このクソ寒いのになんでいちご大福なんだよ」

『美味しそうに見えたから…食べます?』

「いらね」

少し走って駐車スペースに停めると、日の出まであと三時間程だった。

『真っ暗ですね』

「まあな」

車内にコーヒーの香りが広がる。

ハンドルに腕を乗せて、缶コーヒーを啜る透の横顔をそっと見つめた。
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