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Vesica Pisces
第8章 太陽は静寂に寄せる
何だよ。

捕まえたら離さない。

簡単な事だろーが。

✳︎ ✳︎ ✳︎

「Fuck it ‼︎」

スチール製のロッカーの扉がベコッと凹み、一斉に視線が集まる。

「トオル?どうか…したのか?」

無言でスマホを突き出す。

そこにあるのは一枚の写真で、20名程の男女が写っていた。

「伽耶ちゃんだー、会社の新年会じゃない?」

横から身を乗り出すアル。

「これが何?」

「…伽耶の隣にいるヤツ、まじムカつく…」

再度画面を覗き込む。

確かに両隣男の挟まれてはいるものの、その表情は和やかそのもので、どこにでもある新年会の風景そのものだった。

ヘルメットを取ると早々にロッカールームを後にする。

「へぇ、あのトオルでもあんなイラつくことあるんだ」

「メンタルやられてるなら、今日は俺勝てるんじゃね?」

他人の失敗を望んでいるなど、本音ではない事は重々承知だ。

「バーカ、今日みたいに感情剥き出しのトオルの方が手ぇ付けられなくなるって知らねーの?」

「は?マジで?」

「あいつのメンタルに漬け込もうとしてるなら、一生勝てねーよ、ああいう時ほどあいつは燃えるからな」

その日の透のエアは誰の追付いも吹っ切る出来だった。
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