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千夜一夜艶話〜真珠浪漫物語 番外編〜
第1章 昼下がりの情事(綾香・梨央編)
2人は同時に振り返る。
「…月城です。綾香様、梨央様…いらっしゃいますか?」
扉の向こうから聞こえたのは月城の声だった。
梨央は素早く扉の鍵を開ける。
月城はいつもの穏やかな笑みを梨央に向ける。
「…こちらにいらっしゃいましたか…。そろそろお開きの時間ですので、綾香様にご挨拶を…」
「分かったわ。お姉様…」
梨央は綾香を振り返る。
綾香はつい先ほどまで梨央と激しく愛を交わしていたとは思えないほど、乱れた様子を少し見せずににこやかに微笑みながら歩み寄る。
…情事の名残はその美しい頬に浮かぶ桜色の火照りくらいである。
「今、まいります。…梨央もすぐに来てね…」
綾香は潤んだ瞳で梨央を見つめ、そっと頬に触れて部屋を出た。
…麝香の仄かな香りが悩ましくも狂おしく、梨央の胸は疼く。
梨央も綾香の後を追おうとした時…
「お待ちください…」
月城が、紫檀の机に残っていた白薔薇を拾いあげた。
梨央ははっと息を呑む。
月城はその長く美しい指で丁寧に、白薔薇を梨央の髪に挿す。
「…相変わらず白薔薇がお似合いです。梨央様…」
眼鏡の奥の美しい瞳が優しく笑っていた。
梨央は恥じらいながら笑い返し、
「…ありがとう…お姉様とちょっとふざけていたら取れてしまったみたい」
と答えた。
月城は何も言わずに微笑みながら頷くと、優雅な仕草で梨央を廊下へと誘った。
梨央は静かに図書室を出て行く。
…月城は無人になった図書室を見渡す。
…麝香の香りと白薔薇の香気でむせ返るようだ…。
紫檀の机の周りに散らばる本を拾い上げ、書棚に戻す。
ふと見ると、机の上に一片の白薔薇の花弁が落ちていた。
…月城はその花弁を拾い上げ、愛おしそうに口付けをし、黒い上着の胸ポケットに大切にしまいこむ。
そして今度こそ、重厚な扉を締めて図書室を後にしたのだった。
〜fin〜
「…月城です。綾香様、梨央様…いらっしゃいますか?」
扉の向こうから聞こえたのは月城の声だった。
梨央は素早く扉の鍵を開ける。
月城はいつもの穏やかな笑みを梨央に向ける。
「…こちらにいらっしゃいましたか…。そろそろお開きの時間ですので、綾香様にご挨拶を…」
「分かったわ。お姉様…」
梨央は綾香を振り返る。
綾香はつい先ほどまで梨央と激しく愛を交わしていたとは思えないほど、乱れた様子を少し見せずににこやかに微笑みながら歩み寄る。
…情事の名残はその美しい頬に浮かぶ桜色の火照りくらいである。
「今、まいります。…梨央もすぐに来てね…」
綾香は潤んだ瞳で梨央を見つめ、そっと頬に触れて部屋を出た。
…麝香の仄かな香りが悩ましくも狂おしく、梨央の胸は疼く。
梨央も綾香の後を追おうとした時…
「お待ちください…」
月城が、紫檀の机に残っていた白薔薇を拾いあげた。
梨央ははっと息を呑む。
月城はその長く美しい指で丁寧に、白薔薇を梨央の髪に挿す。
「…相変わらず白薔薇がお似合いです。梨央様…」
眼鏡の奥の美しい瞳が優しく笑っていた。
梨央は恥じらいながら笑い返し、
「…ありがとう…お姉様とちょっとふざけていたら取れてしまったみたい」
と答えた。
月城は何も言わずに微笑みながら頷くと、優雅な仕草で梨央を廊下へと誘った。
梨央は静かに図書室を出て行く。
…月城は無人になった図書室を見渡す。
…麝香の香りと白薔薇の香気でむせ返るようだ…。
紫檀の机の周りに散らばる本を拾い上げ、書棚に戻す。
ふと見ると、机の上に一片の白薔薇の花弁が落ちていた。
…月城はその花弁を拾い上げ、愛おしそうに口付けをし、黒い上着の胸ポケットに大切にしまいこむ。
そして今度こそ、重厚な扉を締めて図書室を後にしたのだった。
〜fin〜