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千夜一夜艶話〜真珠浪漫物語 番外編〜
第1章 昼下がりの情事(綾香・梨央編)
晴天に恵まれた五月晴れの空の下…
梨央は、少し離れた庭園から白いレースの日傘を差しながら焦れたように綾香を見つめていた。
「…綾香様、今日のお歌も本当に素敵でした!」
綾香の隣に立ち、うっとりしたように見上げるのは綾香の信奉者であり、学習院女子高等科の生徒だ。
…今日は北白川伯爵家で、綾香の音楽サロンが開かれていた。
音楽サロンという名目で、募金を募り赤十字に寄付する目的があったので、学習院の女学生が数名手伝いに上がっていたのだ。
綾香の歌はいまや社交界でも大評判になり、今日もサロンの椅子が足りなくなるほどの観客に恵まれ、大盛況で幕を閉じた。
そして今は、広々した庭園でガーデンパーティーが開かれている。
…だいぶ人見知りが直ったとはいえ、このように多くの来客が集まる場面はまだまだ苦手な梨央であった。
…それなのに…
…お姉様ったら…ひどい!
さっきから、女学生のお相手ばかりなさって!
梨央は可愛らしい唇をゆがめ、差している日傘の柄を強く握りしめる。
「…梨央さん、お飲み物を取ってまいりましょうか?」
綾香を見てヤキモキする梨央にぴったりとくっつき、話しかけてくるのはかつてのダンス教師のジュリアン・ド・ロッシュフォールだ。
…金髪碧眼の絵に描いたような美貌の貴公子。
梨央に一目惚れし、何回もアタックしてはその都度、綾香の強力なブロックにあっているというのに、未だに諦めていない打たれ強い人物であった。
「…いいえ、結構ですわ。ロッシュフォール先生…」
梨央は綾香が気になって、飲み物どころではない。
「今日の梨央さんはいつにも増してお美しい!白いドレスと、白いパールが実にお似合いだ。…まるで天使です!」
ジュリアンが熱心にかき口説くのも耳に入らず、梨央は綾香を凝視する。
「…ありがとう、鍋島さん」
綾香は妖艶に微笑みかける。
綾香の周りには綾香のファンが人だかりのように犇いている。
美貌で、歌が天才的に上手く、話術も巧みで魅力的な伯爵令嬢は女学生の憧れの的なのだ。
綾香はふと、鍋島と呼ばれた女学生の髪のリボンに手を伸ばす。
「…あら…リボンが解けそう…結び直してあげるわね…」
綾香はその細くしなやかで美しい指で、女学生のリボンを巧みに結び直す。
女学生は真っ赤になって綾香を見上げる。
周りの女学生達から、羨望の声が上がる。
梨央は、少し離れた庭園から白いレースの日傘を差しながら焦れたように綾香を見つめていた。
「…綾香様、今日のお歌も本当に素敵でした!」
綾香の隣に立ち、うっとりしたように見上げるのは綾香の信奉者であり、学習院女子高等科の生徒だ。
…今日は北白川伯爵家で、綾香の音楽サロンが開かれていた。
音楽サロンという名目で、募金を募り赤十字に寄付する目的があったので、学習院の女学生が数名手伝いに上がっていたのだ。
綾香の歌はいまや社交界でも大評判になり、今日もサロンの椅子が足りなくなるほどの観客に恵まれ、大盛況で幕を閉じた。
そして今は、広々した庭園でガーデンパーティーが開かれている。
…だいぶ人見知りが直ったとはいえ、このように多くの来客が集まる場面はまだまだ苦手な梨央であった。
…それなのに…
…お姉様ったら…ひどい!
さっきから、女学生のお相手ばかりなさって!
梨央は可愛らしい唇をゆがめ、差している日傘の柄を強く握りしめる。
「…梨央さん、お飲み物を取ってまいりましょうか?」
綾香を見てヤキモキする梨央にぴったりとくっつき、話しかけてくるのはかつてのダンス教師のジュリアン・ド・ロッシュフォールだ。
…金髪碧眼の絵に描いたような美貌の貴公子。
梨央に一目惚れし、何回もアタックしてはその都度、綾香の強力なブロックにあっているというのに、未だに諦めていない打たれ強い人物であった。
「…いいえ、結構ですわ。ロッシュフォール先生…」
梨央は綾香が気になって、飲み物どころではない。
「今日の梨央さんはいつにも増してお美しい!白いドレスと、白いパールが実にお似合いだ。…まるで天使です!」
ジュリアンが熱心にかき口説くのも耳に入らず、梨央は綾香を凝視する。
「…ありがとう、鍋島さん」
綾香は妖艶に微笑みかける。
綾香の周りには綾香のファンが人だかりのように犇いている。
美貌で、歌が天才的に上手く、話術も巧みで魅力的な伯爵令嬢は女学生の憧れの的なのだ。
綾香はふと、鍋島と呼ばれた女学生の髪のリボンに手を伸ばす。
「…あら…リボンが解けそう…結び直してあげるわね…」
綾香はその細くしなやかで美しい指で、女学生のリボンを巧みに結び直す。
女学生は真っ赤になって綾香を見上げる。
周りの女学生達から、羨望の声が上がる。